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パックンの風刺画コラム Superpower Satire (USA)
「社会的距離」を無視するトランプが、距離を取りたい相手(パックン)
Trumped by the Truth / ©2020 ROGERS-ANDREWS McMEEL SYNDICATION
<感染拡大中にもかかわらず大規模な政治集会で不特定多数と濃厚接触――予防意識のかけらもないトランプでは国の感染対策が遅れるのも当然>
新型コロナウイルス流行中に新しい流行語も登場した。Social distancing(社会的距離)だ。飛沫感染や接触感染を予防するために、他人と一定の距離を置く戦略を指す。日本で広がっているイベント中止や学校閉鎖、時差出勤やテレワークなどの制度も、個人の日常的な心掛けや行動もそれに当たる。分かりやすいのは握手に代わる挨拶だ。足と足をタッチさせる「武漢シェイク」も、合掌する「ナマステポーズ」も、肘を軽くぶつけ合う「エルボーバンプ」も、どれも社会的距離戦略として有効。確かに、肘に病原体が付いても、肘を目や口に入れることはほぼ不可能だ。ぜひ、試してみてください。
でも、ドナルド・トランプ米大統領がやっているのは social distancing と言えなさそう。感染拡大中に1万人規模の政治集会を開いた。自分の所有するリゾートで、息子の恋人のための大規模誕生会も開いた。そしてその誕生会にも、その前の食事会にも、密閉空間である大統領専用機エアフォースワンの中にも感染者や感染者との濃厚接触者がいたことが後に発覚しても、同席していたトランプは自粛や隔離もせずに普段どおりに活動を続けていた。予防のディスタンスというより、無謀なスタンスだ。
だがトランプは不特定多数と近距離で接触する一方、あるものとかなり距離を取る。truth(真実)と science(科学)だ。
「俺はニューヨーク州で最高の野球選手だった」や「温暖化は中国のでっち上げ」など、真実や科学と程遠い発言は昔から多かったが、コロナウイルスについては一層の誤報の連発だ。1月21日の「とてもアンダーコントロール(制御)されている」から始まり、「4月までには、温かくなって奇跡的に消えるはず」や「ワクチンはすぐできる」など、真実や科学だけではなく疾病対策の強化が急務のときに、責任や国益にも反する発言が目立つ。
ちなみに、インフルエンザに関しても「インフルエンザで人が死ぬ? そんなの知らなかった」と、無知をさらけ出している。だが、トランプのおじいさんはスペイン風邪という名のインフルエンザで亡くなっている。それも知らなかったのかな?
大統領がこんな姿勢だと、国の感染対策は遅れて当然だ。故に、想定どおりの結果になった。「今は感染者15人で、それも数日で0になる」とトランプが断言してから1カ月もたたないうちにアメリカ国内で感染者1万5219人、死者201人(編集部注:3月27日18時現在、感染者8万5689人、死者886人)になった。
今こそ真実や科学にこだわらないといけない。そこから離れることは「反社会的距離」だろう。
【ポイント】
I'VE ALWAYS PRACTICED SOCIAL DISTANCING!
「私はずっと社会的距離を取ってきた!」
<本誌2020年3月31日号掲載>
2020年3月31日号(3月24日発売)は「0歳からの教育 みんなで子育て」特集。赤ちゃんの心と体を育てる祖父母の育児参加/日韓中「孫育て」比較/おすすめの絵本とおもちゃ......。「『コロナ経済危機』に備えよ」など新型コロナウイルス関連記事も多数掲載。