コラム

『ナタ2』が大ヒット中だが、中国アニメ映画に世界市場は不要?

2025年02月19日(水)15時00分
ラージャオ(中国人風刺漫画家)/トウガラシ(コラムニスト)

ただ、見る人によってはナタが中国を、ライバルの龍王の王子「敖丙(アオビン)」はアメリカを象徴しているようにも見える。『ナタ2』には、「先に道がないなら、私が道を見つける。天の法則が許さないならこの天地を逆転させてやる」というナタの言葉が出てくる。映画には、「この世界の既存の秩序を打破し、新たな秩序を確立する」思想が所々ににじむ。転覆すべきなのは中国の体制か、世界の秩序か。

日本や東南アジアでも公開予定だが、上映が始まった北米の観客は中国系住民が中心。真のグローバル化はまだ遠い......ように思えるが、『ナタ2』の興行収入はアニメ映画世界一に迫る勢いだ。中国産AIのディープシークも国内人材を中心に開発された。もはや中国に「世界」は要らないのかもしれない。


ポイント

中国アニメ
1941年に上海でアジア初の長編アニメ映画『西遊記 鉄扇公主の巻』が制作された。文化大革命の停滞を経て、改革開放後に海外アニメが大量に流入。2000年代から政府が国産作品の制作に力を入れ始めた。

ディープシーク
中国名は「深度求索」。本社は浙江省杭州市。短期間かつ低コストで米オープンAIの開発した最新モデルに匹敵する生成AI(人工知能)を完成させ、世界に衝撃を与えた。

プロフィール

風刺画で読み解く中国の現実

<辣椒(ラージャオ、王立銘)>
風刺マンガ家。1973年、下放政策で上海から新疆ウイグル自治区に送られた両親の下に生まれた。文革終了後に上海に戻り、進学してデザインを学ぶ。09年からネットで辛辣な風刺マンガを発表して大人気に。14年8月、妻とともに商用で日本を訪れていたところ共産党機関紙系メディアの批判が始まり、身の危険を感じて帰国を断念。以後、日本で事実上の亡命生活を送った。17年5月にアメリカに移住。

<トウガラシ>
作家·翻訳者·コラムニスト。ホテル管理、国際貿易の仕事を経てフリーランスへ。コラムを書きながら翻訳と著書も執筆中。

<このコラムの過去の記事一覧はこちら>

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