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コラム
風刺画で読み解く「超大国」の現実 Superpower Satire
まるで「移民の子さらい」、トランプに注意!(パックン)
(c)2018 ROGERS─PITTSBURGH POST─GAZETTE
<不法移民の摘発を強化したトランプ政権によって、6週間で約2000人の親子が引き離された。子供が人身売買組織に渡されたり、親だけが強制送還されたりするケースも>
今回の風刺画はたいして面白くない。逆に怖いと言っていい。それもそうだ。怖くなって当然のような事実を風刺しているから。
「熊出没注意!」というような標識に描かれているのはメキシコ国境を越える3人家族。命からがらで最悪の境遇から逃げ出したのか、必死に走っている様子だ。そこで後ろから小さな子供をさらっているのは何だか恐ろしいモンスター......ではなく、ドナルド・トランプ米大統領だ。
日本ではあまり報道されていないが、トランプ政権の移民政策はこの風刺画のとおりの醜態を生み出してきた。歴代政権では、不法移民が捕まったら移民局で審査され、入国が認められるかどうかの判決を受けた。積極的に取り締まって強制送還するのは、国内で犯罪を起こした人が主だった。
一方、トランプ政権は「国に入ること自体が犯罪」という見解から、不法入国した全員を犯罪者扱いすることに切り替えた。入国者は刑事裁判にかけられることになるから、捕まった後は司法省の留置場に入れられる。しかし、移民局の施設と違って子供は留置場に入れられないので、親とは別の施設で「保護」される。保護といっても、事実上の収監だ。
政府発表によると、6週間で約2000人が親から引き離された。つまり1日に約47人。赤ちゃんも、英語がしゃべれない子もだ。6月には1日60人にペースアップした。「お子さんをお風呂に入れてきます」と職員が親をだまし、そのまま子供を連行した例もあるという。施設が足りないため、テントに暮らしている子供もいる。それも気温が40度を超えるテキサスの砂漠の中だ。せめてトランプホテルに泊めてあげればいいのに。
しかも隔離するシステムは働いていても、子供を管理するシステムが機能していないようだ。留置場から出た親が問い合わせても、子供の居場所が分からないこともある。政府が引き取り人の確認を怠って人身売買組織に子供を渡したケースもあると、PBS(公共テレビ放送網)は報じた。子供がアメリカで保護されたまま、強制送還された親もいる。
こんな制度は国際法違反だと指摘されていたが、6月20日にトランプは突然、方針転換。家族を一緒に収容することを命じる大統領令に署名した。これには娘イバンカの働き掛けがあったと言われる。自分の子供にはべったりなのに......。
ところで、「なんで先日の米朝首脳会談で北朝鮮の人権問題を取り上げなかったのか」という疑問が挙がっていたが、その答えがやっと分かった。トランプは金正恩(キム・ジョンウン)に突っ込まれたくなかったからだろう。
<本誌2018年7月3日号掲載>
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