- HOME
- コラム
- Surviving The Trump Era
- 二正面作戦を戦うロシアの苦境
二正面作戦を戦うロシアの苦境
しかし、この種の陰謀論は単純な事実を無視している。情報機関はウクライナ戦争と国内反体制派の対応に忙殺されているため、こうした無差別殺人に関する情報収集と必要な対策がおざなりになるのも当然だ。ウクライナがロシアの軍事インフラや石油・ガス精製所への攻撃を強化し、ロシア国内では不安が徐々に広がり始めている。ダゲスタンのテロ事件の後、クリミアの海岸でも民間人の死傷者が多数出た。ウクライナがより多くの弾薬と攻撃用兵器の支援を受け、情報能力を向上させれば、ロシアの苦境はさらに深まりそうだ。
私が初めてモスクワを訪れた15年前に印象的だったのは、地下鉄や空港、大学やショッピングモールに入る前の厳重なセキュリティーチェックだ。9.11同時多発テロ後でも、アメリカ人の私には、これほど厳重な警備体制は経験がなかった。
それでもモスクワの友人たちは、小学生だった90~00年代に感じた本物の恐怖を思い出し始めている。私の妻が最初のダゲスタン旅行の前と同じような反応をするかどうかは分からない。だがロシア人が空港や映画館に行くとき、テロ攻撃が市民を震え上がらせた00年代初頭を彷彿させる恐怖を抱き始めた今、ウクライナ戦争の「副作用」が軍事面だけでなく、心理面でもロシア本国に影を落としつつある。

アマゾンに飛びます
2025年2月25日号(2月18日発売)は「ウクライナが停戦する日」特集。プーチンとゼレンスキーがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争は本当に終わるのか
※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら
日米首脳会談で「ホームラン」を打った石破首相、そこに潜む深刻な懸念材料 2025.02.22
「忠誠心」で固めたトランプ新政権...最大の敵は「期待」と「時間」 2025.01.17
トランプ政権の次期駐日大使ジョージ・グラスとは何者か? 2025.01.09
プーチン成功で「世界秩序崩壊」、失敗なら「支配の終焉」 2024.12.26