- HOME
- コラム
- Surviving The Trump Era
- 「バーベンハイマー」騒動が際立たせた、アメリカ人と…
「バーベンハイマー」騒動が際立たせた、アメリカ人と原爆の微妙な距離感...日本の惨禍への無理解
『バービー』と『オッペンハイマー』を同日に見ることが流行中 PHOTO ILLUSTRATION BY JAKUB PORZYCKIーNURPHOTO/GETTY IMAGES
<平均的アメリカ人の認識では、「原爆」は血に飢えたファシストとの世界大戦を終結に導いた兵器とされている。過去には「ミス原爆」の美人コンテストまで......>
アメリカで大ヒット中の映画『バービー』と『オッペンハイマー』を合体させた「バーベンハイマー」のミーム(ネット上で拡散する画像やフレーズなど)を見て、幼い日の記憶がよみがえった。
私は当時8歳。スポーツチームのコーチから、対戦相手を圧倒して「ヒロシマ」にしてやれと言われた。翌週、私はその意味を知るため、図書館の百科事典コーナーに足を運んだ。これが人生初の研究プロジェクトだったのかもしれない。そこから私が学んだのは、核兵器による破壊の恐ろしさと罪のない人々を殺戮する核兵器の世代を超える影響だ。
ボスニア・ヘルツェゴビナの首都サラエボにある「子ども戦争博物館」の展示は、ブランコで始まり、ブランコで終わる。入り口のブランコは、包囲された街に暮らしていた幼少期のナイーダにとって「最も安全な隠れ場所」であり、血染めの現実から逃れられる場所だった。
出口のブランコは61番目の、旧ユーゴスラビア内戦の子供の記憶と直接関係ない唯一の展示だ。「始まり」と題された解説にはこうある。「子ども戦争博物館の展示はここで終わり。だが、このブランコは揺れ続ける。戦時の子供時代が終わっても人生が続いていくように」
私は最初、この言葉の衝撃を受け止められなかった。人道支援物資の包装紙から破れたアディダスの帽子まで、それまでの60の展示に打ちのめされ、混乱していたからだ。そのうちの1つ、ベルマの診断書にはこうあった。「髪の毛1本の差で生存」。
私は張り裂けるような胸の痛みと涙をこらえながら、自分の講義や議論の場で戦争のイメージを気軽に持ち出し、月に15回は「バルカン化」という単語を使ったことを思い出していた。
過去には「ミス原爆」の美人コンテストも
「バーベンハイマー」のミームの判断ミスを生んだ一因は、間違いなく歴史的知識の面でアメリカ人が原爆の惨禍から距離を置いていることだ。平均的アメリカ人の認識では、原爆は血に飢えたファシストとの世界大戦を終結に導いた兵器とされている。一般の日本人に与えた影響とその視覚的イメージが紹介されることは極めてまれだ。
それでも、アメリカ人は日本の惨禍を学ぶことには意外なほどオープンだ。最近の世論調査によれば、原爆投下についてもっと知りたいと答えたアメリカ人は80%で、日本人より多かった。つまり、無神経なミームは現実から目を背け、原爆の残虐性を忘れ去りたいという感情の産物ではなさそうだ。
米大統領選の現実を見よ――その傲慢さゆえ、民主党は敗北した 2024.11.21
バカげた閣僚人事にも「トランプの賢さ」が見える...今後を占う「6つのポイント」 2024.11.21
歴史的大接戦の米大統領選を左右する7つのファクター 2024.10.31
北朝鮮軍とロシア軍「悪夢のコラボ」の本当の目的は? 2024.10.30
国外ではほぼ無名...石破新首相はアメリカからこう見える 2024.10.18
トランプに異変? 不屈の男がここにきて「愛」を語り始めた訳 2024.10.08
大統領候補よ、花粉症を語れ! 2024.09.12