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サム・ポトリッキオ Surviving The Trump Era
ChatGPTは大学教育のレベルを間違いなく高める――「米国最高の教授」がそう言い切るこれだけの理由
ChatGPTの登場は大学教育を高める絶好のチャンス PHOTO ILLUSTRATION BY DADO RUVICーREUTERS
<ChatGPTは教育にとって脅威どころか、大学にとっては逆にプラス。「米国最高の教授」の1人であるサム・ポトリッキオが語る、目からうろこの理由とは>
対話型人工知能(AI)「チャットGPT」が登場したとき、大学教員の間でパニックが広がったが、私は逆に祝杯を挙げた。
同業者の多くはAIが膨大な不正行為を生み出しかねないと心配したが、私は学生のより公平な成績評価につながる可能性があると考えた。これから不確実な未来に向かっていく学生たちを教育する上で、その在り方を見直すきっかけにもなり得ると思った。
チャットGPTの脅威に同僚たちが過剰反応したのは、学生が大学の授業で提出するレポートや小論文などの作成をAIに「お任せ」すれば、スキルのない怠け者になってしまうと懸念したからだ。
だがまともな教育者や大学なら、これをきっかけにAI利用を許可するケースと禁止するケースの明確化や、正確な引用の仕方についての指導など、しっかりした方針を決めるはずだ。さらに、倫理観を強調し、学習とコンテンツ制作の区別、偽情報への警戒も強化されるだろう。
つまり、AIのせいで学生の不正行為を見抜くのが困難になるという教育者の懸念は、大学に危機感を抱かせ、21世紀の本質的課題に本気で取り組ませる効果がある。
テクノロジーの進化に伴い、人間らしい倫理観を持つリーダーのニーズが高まっている。機械と人間が競争する労働市場で、私たちは人間ならではの必要不可欠なスキルを伸ばしていく必要がある。そして偽情報が氾濫する今、偽物と本物を見分ける知性を身に付ける必要もある。
大学は所属教員に対し、不安定で複雑で曖昧な世界での競争に必要な特性を学生に身に付けさせるための授業設計を促すようになるはずだ。チャットGPTは、質の低い質問をすると質の低い答えしか返ってこないことが明らかになりつつある。
私は学生たちに、将来圧倒的なパフォーマンスを上げるためには「質問学」の博士号が必要だと繰り返し強調している。学生はAIに質の高い質問を投げかけ、今の自分の知識以上のことを学ぼうとする意欲が必要だ。
より高度な質問をすれば、それだけ大きな成果が手に入る。もしチャットGPTが知的作業に不可欠なツールになるのであれば、教育者は優れた「質問者」の育成に力を入れざるを得ない。それこそ将来の世界で必要とされるスキルだ。
金持ち学生の「特権」がなくなる
そして大学教員は「非能力主義」という公然の秘密と戦うことになる。富裕層やコネのある学生は、成績評価で極めて有利な立場にいる。例えば、大半の大学の授業の評価手段は、1回当たり5ページのレポートだけ。これでは金持ちの学生はレポート作成を誰かに「アウトソーシング」できる。
私の元同僚の教授カップルは、わが子の小論文を交代で書いていた。授業中の客観的評価では、その学生は明らかに凡庸だった。だが成績評価のほとんどが「宿題」で決まるため、彼女は両親のおかげで最高の成績を収めることができた。チャットGPTの普及で、全学生がこれと同じ手を使えるようになれば、教員は成績の付け方を再考しなければならない。
私の授業の1つでは過去10年間、完全に手作りの試験か口頭試問しか行っていない。そのため不正の疑いがある事例はゼロ。受講後の学生からは、私の授業(口頭での質疑応答、自発的シミュレーション、具体的な問題設定)は就職後の仕事での経験に最も近かったという感想が寄せられている。
英語の「競争する(compete)」の語源は、「高める」という意味のラテン語だ。チャットGPTは登場の瞬間から、AIと人間の競争は避けて通れないことを明らかにした。だが同時に、大学教育のレベルを間違いなく高めるだろう。教員たちよ、パニックにならず、賢くなろう。
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