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北京五輪の外交ボイコットに対抗する中国が打つ「先手」
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中国政府はアメリカの「外交ボイコット」にどう対処する? THOMAS PETERーREUTERS
<開催まで100日をきった冬季五輪大会。人権問題などを受けてボイコットを求める声も高まっているが現実的な落とし所は?>
アメリカは、中国の人権問題を理由に2月の北京冬季五輪をボイコットするのか。
五輪のボイコットに前例がないわけではない。歴史を振り返ると、正式なものだけでも、1956年メルボルン大会、64年東京大会、76年モントリオール大会、80年モスクワ大会、84 年ロサンゼルス大会、88年ソウル大会の6つの大会を一部の国がボイコットしている。
しかし前回の五輪ボイコットは34年も前のことだ。しかも、大会の規模も昔とは比べものにならないくらい大きくなっている。もしアメリカが北京五輪のボイコットに踏み切れば、激震が走るだろう。
もっとも、五輪のボイコットは象徴的な意味しか持たない。80年代にアメリカと当時のソ連が互いの国で開かれた大会をボイコットしたときも、五輪に向けて生涯を懸けて準備してきたトップアスリートたちの努力が台無しになる一方で、世界秩序が大きく変わることはなかった。
もしアメリカが今回の北京五輪をボイコットすれば、新たな超大国によって地位を脅かされている旧超大国が恐怖心を募らせ、いら立っているという印象を与えかねない。アメリカの国際的な威信と相対的な経済力が低下していることは、ボイコットを思いとどまらせる要因になるかもしれない。中国が報復措置を取った場合にアメリカが被るダメージは昔よりも大きい。五輪スポンサー企業の多くにとって、中国市場の重要性が増していることも無視できない。
アメリカでは米国オリンピック・パラリンピック委員会も大多数の選手も、五輪への不参加には強く反対している。それよりも無難で実行しやすいのは、いわゆる「外交ボイコット」だ。選手団は派遣するが、政府高官は派遣しないという形の対応である。
このアプローチは開催国である中国に屈辱を与える一方で、80年のモスクワ五輪をボイコットした際の失敗を繰り返さずに済む。アメリカがモスクワ五輪への選手団派遣を見送ったことは、当時のソ連政府に絶好のプロパガンダの機会を与えてしまったという見方が根強くあるのだ。80年のソ連や今の中国のように政府が厳しく情報統制を行っている国では、アメリカが五輪に参加しなければ、アメリカの衰退の表れだと自国民に印象付ける材料に使われかねない。
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