コラム

移民はまとめて「聖域都市」へ、トランプの奇策に問題点

2019年05月18日(土)13時40分

ただしトランプ政権が本当に計画を実行できたとしても、不法移民対策として大きな効果を生むことはないだろう。

トランプは不法移民の移送が聖域都市の負担になり、住民たちが最終的にはトランプの移民対策を支持するようになると考えている。だが17年に米保健福祉省が実施した調査では、この10年でかかったコストを差し引いても、不法移民は630億ドル以上の税収をもたらしていることが分かった。

実際、聖域管轄区域を宣言した市長や州知事の多くがトランプの案を歓迎している。移民を強制的に移住させることで、自らの地区に経済的な恩恵がもたらされるからだ。

トランプ政権が最終的に取りそうな対応として最も可能性が高いのは、移民申請に手数料を課すことを提案する大統領覚書を発することで、移民の数を制限するというものだろう。しかしアメリカの移民裁判所は手続きが遅いことで知られているから、トランプの策が大きな成果を上げるとは考えにくい。

大口はたたくが、効果はあまりない――トランプ政権のそんな特徴が、この問題でも存分に発揮されている。

<本誌2019年05月21日号掲載>

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※5月21日号(5月14日発売)は「米中衝突の核心企業:ファーウェイの正体」特集。軍出身者が作り上げた世界最強の5G通信企業ファーウェイ・テクノロジーズ(華為技術)。アメリカが支配する情報網は中国に乗っ取られるのか。各国が5Gで「中国製造」を拒否できない本当の理由とは――。米中貿易戦争の分析と合わせてお読みください。


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サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

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