コラム

2020年トランプ再選のシナリオが「政府閉鎖」で見えてきた?

2018年02月03日(土)14時00分

トランプにとってグローバルエリートの祭典での登壇は大きな勝利だった Denis Balibouse-REUTERS

<与野党対立により政府機関が3日間閉鎖された騒動で、浮き彫りになったのは民主党内の亀裂の深さだ>

1月22日、与野党がつなぎ予算に関して歩み寄り、米政府機関の一部閉鎖は3日で解消された。トランプ大統領はそのとき、行政が正常化したことや、民主党を譲歩させたと吹聴できること以上に喜ぶ理由があったのかもしれない。それは、世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で演説するために、予定どおりスイスのダボスに向かえるようになったことだ。

一昨年の大統領選では「グローバルエリート」を徹底的に批判し、ダボスに集う面々を揶揄したトランプだが、ダボス会議での登壇により大統領選の勝利以上の達成感を味わったとしても意外でない。

トランプが大統領選で有権者の反グローバル感情を読み取れたのは、自らも「インサイダー」たちから不当に排除されてきたという不満を持っていたからだ。エリート層から嘲笑され続けてきたためグローバリゼーションの果実を味わえない人々の気持ちが肌で分かったのだ。

そのトランプがダボスで演説をするのは、究極の自己矛盾にも思える。だが、本人にとっては勝利の瞬間にほかならなかったのだろう。

トランプは26日の演説で、アメリカの明るい未来を強調し、もっとアメリカに投資せよと呼び掛けた。演説の大半は、自ら歴史的とする業績の自賛に費やされた。

しかし、この少し前まで米政府機関が一部閉鎖されていたことを忘れてはならない。その事態を招いたのは、共和党と民主党の党派争い、そしてトランプの政策上の失態と統治能力の欠如だった。今回の政府閉鎖は史上初めて、1つの政党が議会の上下両院とホワイトハウスを制している状況下で発生した。

政府閉鎖が早期に解決したことは、トランプにとって幸いだった。国民の多くは政府閉鎖に批判的で、それを共和党の責任と考えていたからだ。しかも、閉鎖が長期化していれば株式相場への影響は避けられず、トランプは目覚ましい株価上昇を手柄としてアピールできなくなっていただろう。

目先の勝者は民主党だが

政府閉鎖は、政策面では民主党に勝利をもたらした。上下両院で少数派であるにもかかわらず、子供のときに親に連れられてアメリカにやって来た不法移民の扱いに関して、共和党から譲歩を引き出せたからだ。

その半面、政治的には、2020年の次期大統領選挙で民主党が深刻な苦境に追いやられるシナリオが見えてきたのかもしれない。民主党の党内対立は極めて根深く、20年にはトランプがそれに乗じて大統領再選を果たしかねない。

プロフィール

サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

マグニフィセント7決算発表開始、テスラなど=今週の

ワールド

イスラエル首相「勝利まで戦う」、ハマスへの圧力強化

ワールド

対米関税交渉、日本が世界のモデルに 適切な時期に訪

ワールド

米イラン、核合意への枠組みづくり着手で合意 協議「
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 2
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪肝に対する見方を変えてしまう新習慣とは
  • 3
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず出版すべき本である
  • 4
    トランプが「核保有国」北朝鮮に超音速爆撃機B1Bを展…
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 7
    「2つの顔」を持つ白色矮星を新たに発見!磁場が作る…
  • 8
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 9
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 10
    ロシア軍高官の車を、ウクライナ自爆ドローンが急襲.…
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 3
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 4
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 5
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇…
  • 6
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 7
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 8
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 9
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 10
    「世界で最も嫌われている国」ランキングを発表...日…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 3
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 4
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 9
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 10
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story