とはいえ、白、赤、青の3色をアクセントにしたパステル調のトーンとマジックのような人物レイアウトの組み合わせが、スワーボワの最大の魅力ではない。確かにそれは緊張とエレガンスを孕む極上の視覚的快楽を生み出しているが、そうしたものは他の写真家においても見いだすことができる。まして彼女の場合、本人が認めているように、アプリを使ったポスト・プロダクションのテクニックを多用している。

最大の魅力――というより彼女の写真そのものを超えた凄さは、冒頭で触れたように、その得体の知れない世界の気持ちよさの中に、ひっそりと奥底にだが、威厳を持って確実に潜んでいる冷徹とも言える感覚の存在だ。独断的に言えば、当時の社会主義国家が造り出していた抑圧の匂い、あるいは体制(システム)という名の権威主義の匂いである。

実際、スワーボワは、当時の社会にとって水泳はスポーツではなく社会的義務の1つだったと語る。また、多くの作品の舞台となっている社会主義国家時代に作られたスイミングプールで、彼女が最も印象深く感じたことは、水面の静けさと、飛び込み禁止のサインが至る所で見られたことだった。そのことに触れて、スワーボワは言う。本来エクササイズをするべき場所で、彼ら(システム)は私たちに何が許され、何が許されないかを強要してきた、と。

彼女の中に染み付いてきた負のアイデンティティが、意図的にしろ無意識にしろ、パステル調のトーンと、極めて静的な人物たちとともに作品に埋め込まれているのである。それが作品にとてつもない奥行きを生み出している。耽美性と心地よさ、バランス感覚だけでなく、人間社会の謎や矛盾、あるいは恐怖という感情さえ含みながら。

ちなみに、アクセントの効果をもたらしている白、赤、青の3色は、汎スラブ民族の象徴の色でもある。

今回ご紹介したInstagramフォトグラファー:
Mária Švarbová @maria.svarbovat

【参考記事】匿名の若き写真家が見た 68年、プラハ