コラム

失恋から生まれた、可愛くも残虐なキャラクターの小宇宙

2016年07月12日(火)11時05分

“Because you still in my heart” From Winai Namwong @mangaday

<タイ人の漫画アーティスト、ワイナイ・ナムウォンがインスタグラムで発表するのは、一コマ漫画とショートアニメーション。日本的な"カワイイ"にも通じるが、無邪気さと相反する残虐性も内包する作品だ>

 失恋とそこから派生する孤独には、人間の本質が潜んでいる。独りになること、絶望にさえ繋がるかもしれない恐怖。同時に、その裏返しとして人や社会とのつながりへの欲求。

 古今東西、多くの哲学者やアーティストがこのテーマを扱ってきた。今回紹介する30歳のタイ人、ワイナイ・ナムウォンもその一人だ。現在、バンコクにある名門シルパコーン大学でファインアートの修士号取得を目指している漫画アーティストである。写真家ではないが、インスタグラムを活用する優れたアーティストの一人として紹介したい。

 インスタグラムで発表されている作品は、2014年から始めた「Mr.fail」というプロジェクトだ。子供とも大人とも取れるようなシンプルなキャラクターを描きながら、1コマ漫画、あるいはショートアニメーション形式のスタイルで作品を発表している。とりわけ後者のアニメーションは、ある種の人恋しさや孤独が生み出す人間関係や葛藤の小宇宙となっている。

【参考記事】世界にインスピレーションを与える東京発のコラージュアート

 無邪気さや、日本的な"カワイイ"にも通じる愛らしい感覚が、作品全般とキャラクターに脈うっている。加えて、漫画やショートアニメーションにはそれぞれ、キャラクター自身の心の叫びがキャッチフレーズとして添えられている。それらは誰もが経験したであろう、ほろ苦く、同時になぜか心地良い青春時代の記憶かもしれない。

"I want to fly."

Winai Namwongさん(@mangaday)が投稿した動画 -

"If you can fly, will you come back to me?"

プロフィール

Q.サカマキ

写真家/ジャーナリスト。
1986年よりニューヨーク在住。80年代は主にアメリカの社会問題を、90年代前半からは精力的に世界各地の紛争地を取材。作品はタイム誌、ニューズウィーク誌を含む各国のメディアやアートギャラリー、美術館で発表され、世界報道写真賞や米海外特派員クラブ「オリヴィエール・リボット賞」など多数の国際的な賞を受賞。コロンビア大学院国際関係学修士修了。写真集に『戦争——WAR DNA』(小学館)、"Tompkins Square Park"(powerHouse Books)など。フォトエージェンシー、リダックス所属。
インスタグラムは@qsakamaki(フォロワー数約9万人)
http://www.qsakamaki.com

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:変わる消費、百貨店が適応模索 インバウン

ビジネス

世界株式指標、来年半ばまでに約5%上昇へ=シティグ

ビジネス

良品計画、25年8月期の営業益予想を700億円へ上

ビジネス

再送-SBI新生銀行、東京証券取引所への再上場を申
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 3
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、「強いドルは終わった」
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    アメリカを「好きな国・嫌いな国」ランキング...日本…
  • 6
    アメリカの保守派はどうして温暖化理論を信じないの…
  • 7
    名古屋が中国からのフェンタニル密輸の中継拠点に?…
  • 8
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 9
    トランプはプーチンを見限った?――ウクライナに一転パ…
  • 10
    【クイズ】日本から密輸?...鎮痛剤「フェンタニル」…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 4
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 5
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 10
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story