コラム

緩やかな人民元安か暴落か、2つの可能性

2015年12月16日(水)17時00分

 8月以降の外貨準備の急減は、人民元買い(ドル売り)介入をかつてない規模で行ったことが主因の一つであると指摘しましたが、今後、人民元取引の拡大に伴い、そのコストはより大きくなっていきます。中国では景気テコ入れのための金融緩和が続く一方で、米国は利上げ局面に入ります。元安(ドル高)圧力が高まる可能性があるなか、それを元買い(ドル売り)介入で阻止しようとすればするほど、外貨準備は減り、さらなる元安観測や資本逃避懸念が高まるというスパイラルに陥る可能性が否定できなくなります。人民元暴落シナリオです。通貨当局が為替介入を減らした結果、元安となっているのであれば、外貨準備の無駄遣いは抑えられ、こうしたリスクシナリオ発生の可能性を低めることができるとみています。

プロフィール

齋藤尚登

大和総研主席研究員、経済調査部担当部長。
1968年生まれ。山一証券経済研究所を経て1998年大和総研入社。2003年から2010年まで北京駐在。専門は中国マクロ経済、株式市場制度。近著(いずれも共著)に『中国改革の深化と日本企業の事業展開』(日本貿易振興機構)、『中国資本市場の現状と課題』(資本市場研究会)、『習近平時代の中国人民元がわかる本』(近代セールス社)、『最新 中国金融・資本市場』(金融財政事情研究会)、『これ1冊でわかる世界経済入門』(日経BP社)など。
筆者の大和総研でのレポート・コラム

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