コラム

中国の景気はそれほど悪いのか?

2015年10月28日(水)15時37分

 中国の代表的な株価指数である上海総合株価指数は、6月12日に前年末比59.7%高の年初来高値5,166.35ポイントを付けた後、大きく調整しました。8月26日は2,927.29ポイントで引け、高値からは43.3%暴落し、年初からの上昇分の全てを失いました。足元は3,400ポイント前後です。当然、株価暴落による消費への影響が懸念されるわけですが、株価下落(上昇)による逆資産効果(資産効果)は、イメージされるほど大きくはないと思われます。

 株価暴落により乗用車販売に大きな悪影響が出るとの見方がありましたが、実は、中国の株価と乗用車販売はあまり関係がありません。乗用車販売は7月の前年同月比6.6%減をボトムに改善に向かい、9月は同3.3%増と4ヵ月ぶりにプラスに転じました。結論を言いますと、乗用車販売を大きく左右するのは在庫調整です。メーカーによる年間販売目標の引き下げなどを受けて、春先以降、在庫調整が本格化しましたが、それがほぼ一段落した可能性があります。

 李克強首相が主宰する国務院常務会議は9月29日に、2015年10月1日~2016年12月31日の期間限定で、排気量1.6L以下の乗用車の車両購入税を車両価格の10%から5%へ半減することを決定しました。対象となる乗用車は全体の65%程度と広範であり、今後の動向が注目されます。

 三つめは、住宅バブル崩壊、という固定観念です。確かに、中国全体の住宅販売金額は、2014年は前年比7.8%減、2015年1月~2月は前年同期比16.7%減と不振でした。しかし、その後は回復傾向を強め、1月~9月では同18.2%増となりました。既に住宅はよく売れるようになっているのです。これは、2014年11月以降の本格的な金融緩和により、住宅ローン金利が低下したことに加え、2015年3月末の短期での住宅売買や二重ローンを容認する住宅市場テコ入れ策が住宅購入意欲を刺激したことが大きいと考えています。

不動産開発投資の回復がカギ

 さらに中国政府は、1)中国に在留する駐在員や留学生の居住目的の住宅購入に対する規制を大幅に緩和したほか(8月下旬)、2)1軒目の住宅を購入する際の頭金比率を従来の30%以上から25%以上に引き下げる(9月下旬)、といった住宅市場刺激策を打ち出しています。住宅販売増加をテコに家電、家具、内装など住宅に関連する生産・消費を刺激しようとしているのでしょう。

プロフィール

齋藤尚登

大和総研主席研究員、経済調査部担当部長。
1968年生まれ。山一証券経済研究所を経て1998年大和総研入社。2003年から2010年まで北京駐在。専門は中国マクロ経済、株式市場制度。近著(いずれも共著)に『中国改革の深化と日本企業の事業展開』(日本貿易振興機構)、『中国資本市場の現状と課題』(資本市場研究会)、『習近平時代の中国人民元がわかる本』(近代セールス社)、『最新 中国金融・資本市場』(金融財政事情研究会)、『これ1冊でわかる世界経済入門』(日経BP社)など。
筆者の大和総研でのレポート・コラム

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