コラム

「We are so sorry for the inconvenience」日本のホテルで見つけた妙な英語

2019年08月02日(金)18時15分

DragonImages-iStock.

<訪日外国人との接点が多いホテルで、残念ながら英語の間違いが多く見られる。どこが不自然なのか、どう変更すれば誤解がないのか、ネイティブチェックします>

日本を訪問する外国人や、日本に住む外国人が増えている中、その対応として看板からメニューまで、さまざまなものに英語が取り入れられています。それは外国人である私にとってとても有難いことですが、残念ながら時々とても変な英語で書かれているものがあります。

グーグル翻訳などの機械翻訳に日本語を入力して出てきた英語をそのまま利用しているように見える一節もあり、その中で、日本人が犯しがちな英語の間違いを見つけることもあります。

私が日本で行動しなから気づいた「妙な英語」を写真に撮って、ツイッターで紹介するとフォロワーの皆様からよい反応を頂いたため、この連載では詳しい解説を加え、より多くの方々に英語に関する新たな気づきを提供していきたいと思っています。

日常にある身近なものを取り上げるので、英語への理解向上にきっと役立つはず。皆様にとって参考になれば嬉しく思います。

please refrain from(遠慮してください)は古臭い言い方

ホテルは訪日外国人との接触の原点だと言えます。そのため、ホテルが宿泊客に情報を伝える際、アナウンスなどはすべて日本語と英語を始めとする外国語で行われる必要があります。

なかには、外国人が知らないかもしれない日本の習慣の説明が求められる時もあるでしょう。そして残念ながら、そういう場合に英語の間違いが見られることが少なくありません。

●部屋着での朝食会場はご利用できません。あらかじめご了承くださいませ。Please refrain from having the morning service with gown. Thank you for your cooperation.

これは私が北九州のビジネスホテルに泊まったとき、エレベーターで見つけた「妙な英語」の一例です。ここには複数の問題がありますので、それを1つずつ分析していきましょう。

まず、please refrain fromは正しい英語であり、「遠慮してください」の意味を正確に伝えるものではあるのですが、ややフォーマルで古臭い言い方なので、すぐにはピンと来ないネイティブがいるかもしれません。また、英語を母国語にしない人が知らない表現である可能性もあります。

文章としては適切かもしれませんが、このような場合、より直接的なplease do notのほうが分かりやすいと思います。

さらに、日本語の中に使われているカタカナ英語をそのまま英語にしてしまう、というよくある間違いもこの張り紙では見られます。

日本のホテルや飲食店では朝の時間帯に朝食のセットメニューやバイキングをよく提供していて、それを「モーニングサービス」などと呼ぶようですが、それをそのままmorning serviceとしても、外国人には通じません。和製英語であり、英語にはない言い方だからです。教会のmorning services(朝の礼拝)と捉えることもできるので、混乱を招く危険性もあります。

また、gownは確かに辞書に「ガウン、室内着」などの意味で載っていますが、これは古い言い方で、今は一般的にそのような使われ方をしません。現在最も頻繁に見られるgownの意味は「床までの長さの婦人用ドレス」で、例えばbridal gown(花嫁のドレス)や evening gown(女性正礼装ドレス)などを指します。

ホテルの部屋にある室内着は通常、(このホテルにあったように)パンツがない長いタイプなので、robeと呼ばれます。

そこで、Please do not wear your robe to breakfast.としたほうが望ましいでしょう。

どこであれば室内着を着て行っていいのかを判断するのは難しく、外国人が混乱するのは驚くべきことではないでしょう。なぜなら温泉旅館では、浴衣姿で一日過ごしたり食事へ行ったりする人が多いからです。

実は、この張り紙のあったホテルにも大浴場があり、温泉旅館と同じように室内着を公のスペースに着て行ってもいいと誤解する外国人もいたかもしれません。

プロフィール

ロッシェル・カップ

Rochelle Kopp 北九州市立大学英米学科グローバルビジネスプログラム教授。日本の多国籍企業の海外進出や海外企業の日本拠点をサポートするジャパン・インターカルチュラル・コンサルティング社の創立者兼社長。イェ−ル大学歴史学部卒業、シガゴ大学経営大学院修了(MBA)。『英語の品格』(共著)、『反省しないアメリカ人をあつかう方法34』『日本企業の社員は、なぜこんなにもモチベーションが低いのか?』『日本企業がシリコンバレーのスピードを身につける方法』(共著)など著書多数。最新刊は『マンガでわかる外国人との働き方』(共著)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米経済活動、ほぼ変化なし 雇用減速・物価は緩やかに

ワールド

米移民当局、レビット報道官の親戚女性を拘束 不法滞

ビジネス

米ホワイトハウス近辺で銃撃、州兵2人重体か トラン

ビジネス

NY外為市場=円下落、日銀利上げ観測受けた買い細る
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 5
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 6
    ミッキーマウスの著作権は切れている...それでも企業…
  • 7
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 8
    ウクライナ降伏にも等しい「28項目の和平案」の裏に…
  • 9
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 10
    あなたは何歳?...医師が警告する「感情の老化」、簡…
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 9
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story