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60年代学生運動『いちご白書』再び、ニューヨークのキャンパスが燃えている

ガザ攻撃反対運動の学生テントがコロンビア大学のメインキャンパスを埋め尽くしている(今月22日) Caitlin Ochs-REUTERS
<コロンビア大学のイスラエル非難行動への強硬対応をきっかけに、全米各地の大学に運動が広がっている>
イスラム組織ハマスによるイスラエルへの奇襲テロが起きたのが、昨年の10月7日でした。これに対するイスラエルのネタニヤフ政権の反応は、ハマスのメンバーへの攻撃というものでした。この作戦は、当初は北部への空爆を主体としたものでしたが、やがて陸上からの侵攻も激化、さらに南部への攻撃も開始されるなどエスカレートしていきました。結果的にパレスチナの民間人犠牲は、3万人を超えると報じられています。
この事件の影響を大きく受けているのがニューヨーク市です。この半年間、イスラエル、パレスチナ双方の支持派によるデモが常に市内で発生していたからです。当初の段階ではイスラエル支持派はマンハッタンの東岸にある国連本部を拠点としてデモ活動を行っていました。また、パレスチナ支持派は島の中心にある繁華街の、タイムズ・スクエアでデモを行うことが多かったのです。
初期段階においては、警察当局は両派が接触するのを防止するため、徹底的な引き離し作戦を行っていました。両派の側も衝突を避け、穏健に主張を行うことで世論を敵に回さないようにしていました。この時点では、パレスチナ支持派は、アラブ圏の出身者や二世などが中心でした。
その次の段階では、コロンビア大学が主な舞台になりました。例えば、コロンビア大学の教授に就任したヒラリー・クリントン元大統領候補などは、イスラエル支持の立場を明確にしたため、多くの学生が授業をボイコットするなどの騒動が起きました。今年に入ると、イスラエルの攻撃による民間人犠牲が止まらない中で、アラブ圏出身以外の一般学生からもネタニヤフ政権の軍事行動に反対する動きが拡大していきました。
コロンビア大学のキャンパスは、その結果として両派がにらみ合う危険な状況になりました。やがて、パレスチナ支持派がキャンプ村を開設、先週4月16日の火曜日頃までには、学生たちがガザ攻撃反対を叫びながら歌って踊る「解放区」の様相を呈していました。その中では、「ティーチイン(討論集会)」「記録映画の上映」「反戦詩の朗読会」などのイベントも行われ盛り上がりを見せていたそうです。
イスラエル批判は反ユダヤ主義?
これに対して、18日の木曜日には大学当局が、この「解放区」、つまりキャンパス内にテントを張っていた学生約100名について停学の処分を行うとともに、警察の介入を要請して彼らは逮捕されました。姉妹校の女子大、バーナード・カレッジの学生も追って処分対象になりました。
この動きはこの問題の大きな転換点になりつつあります。処分と逮捕の対象となった学生の多くは直接暴力行動に走ったわけではありません。学生たちが主張している、「イスラエルがガザで行っているのはジェノサイド(大量虐殺)だ」とか「即時停戦を」という言い方は、「アンチ・セミティズム(反ユダヤ)」であって、人種迫害という重大な犯罪だというロジックが逮捕の理由とされています。
本来この「アンチ・セミティズム」という言葉は、欧州やロシア、アメリカ南部などで歴史的に見られたユダヤ人迫害を指す言葉です。パレスチナ側に立って、イスラエルの政策を批判する意見への非難に使うのは、言葉として誤用なのですが、ここへ来てそうした歯止めはなくなりました。
強引な論理ですが、こうした論理の裏には、例えばユダヤ系の学生、特に政治的な関心の薄い学生などが「自分の身の危険を感じる」と強く訴え出ていること、大学の経営を支えるユダヤ系大口寄付者の多くから強い批判があることが背景にあると言われています。ニューヨーク市の世論も、やはりユダヤ系の住民の影響力の反映として、数の論理、経済の論理としては、イスラエル寄りです。
一方で、パレスチナ支持派の学生たちは、パレスチナ国旗を掲げ、白黒チェックのバンダナをまとっています。中には「ハマスを支持する」というスローガンも見られます。ハマスは武装組織だけでなく、ガザ地区の行政を回している政党ですから、支持するとしても、正確に言えばテロを支持したことにはなりません。ですが、学生たちのそのようなルックスや言動は、どうしても親ユダヤ系に恐怖感を与え、強く挑発してしまいます。その結果として対立が激しくなっていったのは事実です。
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