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大統領選を揺るがしかねない米Z世代の深刻なバイデン離れ
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首都ワシントンでガザの停戦を訴えて声を上げる人たち Leah Mills-REUTERS
<ガザ地区を攻撃するイスラエルとそれを支援し続けるバイデン政権の姿勢にZ世代は憤っている>
アメリカのZ世代とは、いわゆる「ミレニアル世代」の次の世代であり、おおよそ1997年から2012年生まれのグループを指します。このZ世代は、全体的にリベラルが強く民主党の支持層になっているという解説がされてきました。ところが、ここへ来てこのZ世代の「バイデン離れ」が起きていると言われています。
1年毎に400万人がいると言われるZ世代からは、例えばですが、前回の2020年の大統領選から4年が経過する、次回の2024年の大統領選挙では新たに18歳から22歳の1600万人が選挙権を行使します。この動向は、選挙情勢に大きな影響を与えかねません。
では、どうして「バイデン離れ」が起きているのかというと、イスラエルがガザ地区で起こしている人道危機に対する憤りが強いからです。アメリカといえば、左右を問わず中東においてはイスラエルを支持してきましたし、ユダヤ系と民主党の結びつきも歴史的に強いものがあります。
にもかかわらず、Z世代のイスラエル離れが起きているのには、様々な理由があると考えられます。
9.11テロを知らない世代
まず、世代的な時間のズレがあります。彼らの多くは2001年の9.11テロを全く知りません。そればかりか、アフガニスタン戦争、イラク戦争も現在進行形では経験していません。記憶にあるとしても、アフガンの山岳戦で敗退し、イラクでは自爆テロに苦しんで戦況が泥沼化した戦争後期の印象が種となっています。ですから、アメリカが攻撃されたとか、イスラム圏への根源的な嫌悪という感覚を全くもっていないのです。
その結果として、軍産複合体による人命軽視と浪費という負の歴史的な印象を継承しています。そんな彼らには、ブッシュ政権だけでなく、ソマリアで惨敗しコソボ問題でも積極的に空爆を選択したクリントン政権については、負の印象が強いのです。そして、軍産複合体を推進したとして、チェイニー元副大統領と、ヒラリー・クリントン氏はほとんど同列の存在として嫌悪の対象になっています。
更に言えば、このZ世代は分厚い人口の「塊」を構成するだけでなく、経済的にも自立しています。今は、少し雇用の先行きに不透明な感じもあります。ですが、基本的に名の通った4年制大学を卒業して、一定期間の就職活動を経てフルタイムの職を得れば、金融やテック系の場合であれば、年収で12万ドル(1800万円弱)から14万ドル(2100万円弱)の初任給が得られます。人口の多さと、経済力はその世代にある種の「全能感」を与えつつ、上の世代が達成し得なかった「正義の実現」を自分たちが成し遂げるのだという意識を生みます。
従来は環境問題や、人種問題、あるいは性的嗜好による差別の問題に向かうことの多かった彼らの「正義感」が、ここへ来て一気にガザ地区における人道危機に関心を寄せることになってきているのです。
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