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フェミニズム映画『バービー』が政治的配慮の末に犯したミス
1つは、夢の世界「バービーランド」と正反対の「リアル・ワールド」では、大統領がビル・クリントンとされていることです。これは、90年代という記号であるだけではないと思います。
仮に、その大統領が架空の人物であれば、ハリウッド的な仮想現実の作り方としては、あまり面白くありません。かといって、ジョージ・W・ブッシュであったら、やはり党派的と批判されてしまうでしょう。そこで、男性支配の社会の象徴としてクリントンを持ってきたというのは、一種の保守派への配慮となっていると思います。
2点目は、主題歌です。この映画には明らかな主題歌があります。重要なシーンで登場人物がその歌を歌うという瞬間があります。
その歌は『Closer to Fine』という曲で、1990年代を駆け抜けていった伝説のデュオ「インディゴ・ガールズ」の1989年のヒット曲です。様々な毀誉褒貶に晒されつつも、90年代という時代にLGBTQの権利を主張して歌い続けてきた彼女らの曲は、ある意味ではこの映画のスピリットを象徴していると言えます。
サントラでは、オリジナルではなく、LGBTQコミュニティーをリードする当代の人気女性歌手ブランディ・カーライルが、同性婚パートナーのキャサリンさんとのデュオで、端正でウォームな歌唱を披露しています。しかしこの『Closer to Fine』(意訳をするのなら、「当たり前へ少しでも近づこう」)ですが、エンドロールでは出てこず、重要な歌であるにもかかわらずサントラでもデラックス版にしか収録されていません。
さまざまな自主規制
こうした措置には、本作がフェミニズムの映画ではあっても、LGBTQの権利主張を前面に押し出した映画ではないという「自主規制」をした可能性があると思います。現時点では、とにかく映画が大ヒットとなり、関係者の政治的発言力もパワーアップしてきているはずです。そうなると、来年春のオスカーで、このカーライルが歌う『Closer to Fine』が主題歌賞の候補になるかもしれません。この点は注目していきたいと思います。
自主規制と考えられる点は他にもあると思います。例えば映画の論点をフェミニズムに絞るために、LGBTQの要素を軽めにしたと同時に、人種や多文化の問題を無理に押し込まなかったということも「気遣い」の一つと言えるかもしれません。
いずれにしても、ここまでフェミニズム思想、それも明らかに現在のアメリカのリベラル思想の延長としてのフェミニズムを前面に押し出しながら、アメリカの保守派を大きくは怒らせず、上映禁止運動などの雑音を排除したのは見事だと思います。
ただ、一言だけ言わせていただくのであれば、そのような「保守派への配慮」が、無関係な映画『オッペンハイマー』と一体化した一部ファンの「バーベンハイマー」騒動を許容することとなった可能性は否定できません。SNS対策などには専門的なノウハウを持つ人材をあてているはずの大手スタジオが、炎上ミスを犯した背景にはそのような「スキ」があったのかもしれないと考えられます。
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