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ブログ闇将軍となったトランプ、その不穏な影響力
だからこそ、下院共和党議員団のボスである、ケビン・マッカーシー議員(カリフォルニア23区)は、1月6日の騒乱事件に対しては批判声明を出し、あくまで選挙結果を認めないトランプを差し置いてバイデンを新大統領と認めたのです。また、下院共和党内で「Qアノン」派と言われ、数々の陰謀論を発信してきたマージョリー・テイラー・グリーン議員への懲罰にも抵抗はしなかったのでした。
ですが、ここへ来て別の動きが顕著になってきました。下院共和党の幹部でナンバー3の職務である「議員団長」のリズ・チェイニー議員に対する批判が激しくなってきたのです。チェイニー議員は、ディック・チェイニー元副大統領の娘で、父親が以前10年間守っていたワイオミング州全州区から議会下院に当選してきている大物です。
そのチェイニー議員は、トランプが選挙戦の敗北を認めない姿勢を強く批判してきましたし、1月6日の事件についてはこれを重く見て、トランプに対する退任後弾劾決議に賛成票を投じています。今回問題になったのは、そのようなチェイニー議員の「反トランプ」の姿勢でした。
チェイニー下ろしが加速
通常は、2年の任期の半ばで議員団の幹部を入れ替えるというのは、かなり異例なことなのですが、下院の共和党議員団では公然と「チェイニー更迭論」が出てきたのです。そこでチェイニー議員の後継として猛烈に売り込みを始めたのが、エリス・ステファニック議員(当選4回、ニューヨーク21区)でした。
ステファニック議員は、当初は穏健な保守派でしたが、ここ数年は選挙区事情もあり熱心なトランプ支持に傾いており、1月6日の暴動直後に行われた決議においても、トランプの当選を主張していた人物です。
そのステファニック議員について、5月5日にドナルド・トランプは「下院議員団長への就任を支持」するというブログの書き込みを行いました。これによって共和党内で一気に「チェイニー下ろし」が加速していきました。つまり、トランプは「ブログ闇将軍」として、今でも議会共和党に隠然たる影響力を持っていることを証明したことになります。
この「闇将軍トランプ」の影響力が、2022年11月の中間選挙まで続くのか、続いたとして、それが共和党に追い風となるのか、それとも中間層離反を招くことで民主党を勝たせる要因となるのか、すべてはバイデン政権のコロナ対策、経済運営にかかっていると思います。バイデン政権が政策で挫折すれば、一気にトランプは攻勢を強めてくる、そう考えておく必要がありそうです。
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