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崩壊都市の再生をかけたNY市長選、「ベーシックインカム」か「ガーディアン・エンジェルス」か
民主党候補のヤング氏は大統領選予備選でもBI導入を訴えていた Mike Segar-REUTERS
<コロナ禍によって都市機能が壊滅的な打撃を受けたニューヨーク、その再生をかけた市長選の候補者選びが動き出した>
新型コロナウイルスによる社会的影響ということでは、ニューヨーク市の状況は非常に厳しいものがあります。人口8400万人の都市において、現在までの陽性者が累計で64万7000人(人口比7.7%)、死者2万7856人(人口比0.03%)というのは、今ではアメリカの平均値よりは「まし」な数字となっています。
ですが、都市機能ということでは瀕死の状態が続いています。まず国際観光都市としての機能は停止、そしてミュージカルや演劇、音楽の拠点都市という機能もほぼ停止、そして知的労働がほぼ100%テレワークに移行したアメリカでは、オフィス関連の経済も低迷しています。その結果として、レストラン業界では現時点で全体の50%近くが閉店に追い込まれており、最終的にはコロナ禍前の3分の1が生き残るかどうかという予測もあります。
経済の低迷、雇用の崩壊が進む一方で、治安の悪化が恒常化しています。治安ということでは、まずコロナ禍の第1波が猛威を振るった昨年春には、24時間営業を中止して閉店している夜間の店舗などを狙った侵入盗が増加しました。また、感染拡大防止のために、刑務所から臨時に釈放された受刑者がホームレス化したことも問題となりました。
また夏場以降は、ランダムなターゲットを狙った乱射事件が散発的に起きています。また、乗客の減った地下鉄や郊外鉄道の車内でも、まるで80年代に戻ったかのような治安の悪化が見られます。そんな中で、市内の富裕層の人口は過半数がすでに市外に流出していると言われています。昨年秋にはこうした状況を受けて、ニューヨーク市内で家具の中古市場が異常に活性化するという現象も起こりました。
BI導入を訴えるヤング氏
こうした中で注目されているのが、今年2021年11月に予定されている市長選挙です。2008年に法改正がされ、市長には3選が禁じられたため、現職のビル・デブラシオ市長は退任となり、新人が争うことになります。
民主党、共和党ともに候補者を決定する予備選は6月に予定されています。ですから、最終的な選挙の構図はそれまでに二転三転するかもしれません。そうではあるのですが、現時点では非常に興味深い対立構図が生まれています。
まず民主党では、10名以上が名乗りを上げていますが、その中から一歩抜け出しているのはアンドリュー・ヤング氏です。台湾系でテック関連の企業家であったヤング氏は、「BI(ベーシックインカム)」の導入を主張して、2020年大統領選挙の予備選に出馬、最終的には撤退しましたが、貧困問題解決の切り札としてBIの施行をブレずに説き続けた姿勢は、若者を中心に大きな反響がありました。
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