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「トランプ隠し」作戦が効いた、副大統領候補討論の評価
Jonathan Ernst-REUTERS
<今週の副大統領候補の討論会では、共和党のペンスがトランプのことを語らない「トランプ隠し」作戦に出た。結果として、トランプを糾弾した民主党のケインにペンスが「勝利」したという評価に>(写真:トランプを糾弾するケイン〔左〕の攻撃をペンス〔右〕は完全にスルー)
今週4日にバージニア州で行われた副大統領候補のテレビ討論は、様々な意味で注目されていました。まず、共和党のマイク・ペンス候補(インディアナ州知事)は、前週以来「国税を長期間にわたって払っていない」ことがわかって炎上中のトランプ陣営を、「救う」ことができるかどうかが話題になっていました。
一方、民主党のティム・ケイン候補(バージニア州選出上院議員、同州の元知事)には、相方のヒラリー・クリントンが若年層の間で不人気なのをカバーするという役割、具体的には人間味や庶民性が期待されていました。
ところがその討論の内容は、大変に奇妙な流れになりました。というのは、ペンスは「まるでドナルド・トランプという候補の存在がない」かのように振る舞ったのです。一種の「トランプ隠し」作戦です。
【参考記事】前代未聞のトランプ節税問題と奇妙な擁護論
例えば、ケインが「トランプは税金を払っていない」と突っ込むと、ペンスは「困ったような顔をしながら首を横に振って」まるで、ケインの批判が「ウソ」であるかのようなボディ・ランゲージを見せるのです。では、その批判に対して反論するかというと、それは「一切しない」という非常に高度な作戦に出ていました。正に「トランプ隠し」の戦術です。
それでは、ペンスは何を語ったかというと、極めてクラシックな共和党的な論法によって、民主党のリベラリズムを攻撃しました。例えば、中絶問題で強硬な姿勢を見せ、財政規律に関してはオバマ政権を批判するという論法です。そして、その「典型的な共和党右派の論法」はトランプのアナーキーな罵倒スピーチに慣れた耳には「何ともいえない懐かしさ」を感じさせました。これもまた、「トランプ隠し」に他なりません。
そんな中で、ケインはあくまで「トランプ」にこだわりました。例えば、ペンスが「ロシアの横暴を許したのは、オバマとヒラリーの外交が弱いからだ」と攻め立てると、ケインは「そのロシアのプーチンをトランプは賞賛している」と激しく突っ込むわけです。ですが、そのケンカをペンスは「困ったような顔」でスルーする、その繰り返しでした。
結果的に、ケインはペンスの発言を遮って「でもトランプはこう言っている」「その点についてトランプはこうも言っている」と、トランプの暴言や罵倒のセリフを持ち出して攻撃するのですが、これがどんどん空回りして行きました。何も考えずに見ていると、ケインは「とにかく相手の発言を遮る失礼な人間」とか「攻撃的に過ぎて安っぽい」というイメージを受けるわけです。
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