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常軌を逸したトランプ「ロシアハッキング」発言の背景
2番目には、民主党の党内メールのハッキング事件が関係しています。先週、民主党の全国委員会(DNC)の内部的な「やり取りのメール」が何者かによってハッキングされ、ウィキリークスに暴露される事件がありました。その中には、DNCとしてバーニー・サンダース上院議員に不利な扱いを工作しているような表現、あるいはサンダースのことを「無神論者」と罵倒する表現があったわけです。このことで、DNCのデビー・ワッサーマンシュルツ全国委員長は肝心の党大会を前に辞任に追い込まれました。
このハッキングを行ったのが「ロシア政府筋」だという説があります。正式な発表はないものの、CIA(米中央情報局)やNSA(米国家安全保障局)あるいはペンタゴン(米国防総省)などのインテリジェンス・コミュニティーでは、「どうもそうらしい」という声が囁かれているのです。
これに関連した発言として、例えば民主党大会の席上で、マデレン・オルブライト元国務長官は「民主党へのハッキングで、プーチンとトランプは同罪」「トランプを当選させることはプーチンへのプレゼントになる」として、激しく怒っていました。トランプにしてみれば、そのような民主党の側の「怒り」も煽ってみようという思惑のようです。
【参考原稿】トランプの「暴言」は、正式候補になってますますエスカレート
3番目には、例えばロシアはアメリカやヒラリーの弱点を握る「切り札」として、アメリカによる過去の違法な盗聴行為の「生き証人」であるエドワード・スノーデンを手の内に持っているわけです。そのスノーデンもまた、今回の暴露に一役買ったウィキリークスの創始者であるジュリアン・アサンジも、アメリカの若者にとっては「ヒーロー」だという側面があります。特にサンダース支持者などでは、そうです。
スノーデンを匿っているロシア、そしてウィキリークスが関与する形で、ヒラリーと民主党の「秘密が暴かれる」のは、トランプにとっては「自分の選挙戦に有利になる」ことなのでまったく恥じることなく「良い動き」だと見ているようです。
その結果、「ロシアにヒラリーの消去メールをハッキングしてもらおう」という、とんでもない暴言が飛び出したわけです。これに対しては、軍関係者、民主党大会での発言者からは「大統領候補が自分の国の国家機密に関する情報を、他国にハッキングしてもらおうなどと言うのは前代未聞」「国家の独立性が侵される」といった調子で激しい批判が続いています。
すでに先週から出ている、「NATOの集団的自衛権の否定」や「無条件でのエルドアン政権支持」といった暴言に追加される形で、トランプの「無茶苦茶」ぶりはさらにエスカレートしていると言っていいでしょう。
今週、民主党大会でヒラリーが「指名受諾演説」を行った後、両候補の支持率を測定する本格的な世論調査が実施されることになります。その際にはトランプの一連の「暴言」の影響が反映されるのではないかと思われます。
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