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冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
円の独歩安トレンドにどう備えるか?
ドル円の相場が動き始めました。2008年9月のリーマンショック以来、ドルが89円から91円で推移していたわけですが、ここへ来てジリジリと円は下げて94円台に突入しています。
このドル円の動きですが、この間ずっと円高ドル安が続いたというのには、特殊な要因がありました。1つは、アメリカの財政赤字がどんどん拡大していたこと、そしてFRB(米連邦準備理事会)がゼロ金利政策を採っていたことがあります。この2つのドル安要因はハッキリしたものだったのですが、どうしてその圧力が「円」に来たのかというと、ユーロとポンドは金融危機でボロボロだったのと、人民元は完全に変動相場になってはいないのでドル安の受け皿にならなかったからです。
いわば消去法的に円がターゲットになり、巨大なドル安圧力を受け止めていた、この1年半に及んだ円高ドル安にはそうした大きなエネルギーがあった、そう理解するのが一番スッキリします。もう1つ、人民元に対する円の高止まりという現象も、現時点ではドル元相場がコントロールされているために、円高ドル安がストレートに反映していただけです。
さて、4月に入ってこの2つのトレンドが反転し始めました。アメリカの金利が上昇の気配を見せている中で、ドルが高くなる方向でのエネルギーが生まれています。一方で、人民元についても、4月15日をメドとして切り上げという噂が日に日に濃くなっています。仮にそうなれば円元レートでは、ドル高円安と、ドル安元高の「かけ算」で大きく動く可能性が出てきました。
1つの懸念は、こうしたタイミングとシンクロするような形で、過剰な流動性供給や国債発行高の安易な上乗せを行うと、円安、特にユーロまでを対象に含めた「円の独歩安」に陥る危険があるということです。
少し以前までは、円安イコール「輸出産業にはメリット」というイメージがハッキリしていましたが、今は状況が異なります。日本企業が中国で北米向けの製造を行っているような場合は、元高ドル安のデメリットをかぶることになります。また、農産物から工業製品まで、多くの産品を中国からの輸入に頼っている現状では、元高円安の結果は物価の上昇に直結します。
この問題に関しては、為替レート変動によるメリット・デメリットは大変に複雑なのだから「為替の安定が望ましい」という毒にも薬にもならないコメントが、政府からも大手のジャーナリズムからも出てくことになるのですが、私はそれではダメだと思います。複雑な時代であればこそ、自国通貨の将来像に関しては、しっかりしたイメージと戦略を持つべきだと思うのです。
日本が高付加価値最終製品の生産国として、高付加価値労働の雇用を守ってゆくのか、それとも中付加価値でいいのか、あるいは部品や半製品の製造拠点になってゆくので良いのか、そうした選択肢の中から何を目指すかによって為替の将来イメージも変わってくるように思うのです。
その結果として、通貨を守る必要があれば厳しい決意のもとで財政赤字を減らしてゆく必要があるでしょうし、仮にある程度の円安を受け入れるにしても、超円安とハイパーインフレに陥らないためには、やはり財政の節度は必要になってくるでしょう。
今度という今度は、国家としての、いや「円通貨圏」としての戦略が求められるように思うのです。通商政策、財政、人材像と教育、どれも通貨にリンクしていくわけで、より複雑化する世界の中で、それぞれの戦略を整合性をもって最適化することが求められています。その意味で、政治やジャーナリズムに期待されるものも、昔とは違うと考えるべきでしょう。
アメリカにいると、原油高には敏感になるのですが、為替には鈍感、そんな感覚があります。経済の規模が大きすぎるために、そして今でもドルが基軸通貨の地位を維持しているために、為替への警戒心はそれほど起きないのです。そんなアメリカにいると、私の場合、余計に円の地位が心配になるのです。89円から94円というのは、率で言えば5.6%の円安です。円は、そろそろ警戒水域に入ってきました。
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