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「トランプお友達作戦」で安倍さん大丈夫?
安倍首相の「お友達作戦」は各国首脳から敬遠されていたトランプには効果抜群 Joshua Roberts-REUTERS
<ニューズウィーク日本版11月7日発売号(2017年11月14日号)は「トランプのアジア戦略」特集。トランプは混沌のアジアに何をもたらすのか。トランプ歴訪とアジアの新地政学をテーマとするこの特集から、パックンによる、ちょっとマジメな「安倍トラ」考察の寄稿を本誌発売に先駆けて転載する>
安倍晋三首相に対して物申すこともあるが、今日は評価している点を2つ挙げる。1つはドナルド・トランプ米大統領対策。2つ目は滑舌。滑舌が悪い僕から見て、こんなに親近感がわく首相って、本当に心強く感じるのだ。
では、1つ目に戻ろう。ちょうど1年前、トランプが米大統領選挙に勝利したことは、おそらく本人も含め、みんなにとって想定外の結果だった。外国の外交筋も、当然ヒラリー・クリントンが勝つと思い込み、トランプとのパイプ作りはほとんどできていなかった上、各国の首脳たちの間ではトランプと少し距離を置こうとする動きが目立った。
そこに安倍さんが金ピカのゴルフクラブを手に、就任前のトランプの元に駆け付けた。パフォーマンスが大好きでいて、常に「ディスられている」とコンプレックスを持っているトランプにとっては、一番ありがたい対応だったと思われる。以前、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領をリスペクトする理由として「僕を褒めてくれたから」と説明したことからも分かるように、トランプは好かれると好きになるタイプ(昔、そういう犬を飼っていた身としては、嫌いじゃない性格だ)。
そんなトランプは、今も続いている同盟国からの冷たい態度は本当につらいはず。メキシコの大統領とツイッターで喧嘩し、オーストラリアの首相と電話で喧嘩し、カナダの首相とは笑顔を保ちながら、力比べなのか、喧嘩なのかよく分からない握手をした。
海外遠征も少し寂しい感じだ。ドイツやイタリアを訪れたときは、あまり歓迎されなかった。やっと7月にフランスを国賓として訪問したが、「トランプ立ち入り禁止区域」を作ったデモで迎えられた。
イギリスのテリーザ・メイ首相は「今度ぜひいらっしゃい」と誘ってくれたが、国内の反発が強くて訪問の時期は来年に持ち越された。メイは女王に会わせる約束もしたが、「陛下に恥をかかせる結果になるため、国賓としての訪英はさせるべきではない」という請願が政府のウェブサイトに出され、総選挙で早めに締め切られたにもかかわらず200万人近くがサインした。メイの誘いは「今度飲もう」のような、空虚な社交辞令に見え始めている。
日本はメディアもお祭り騒ぎ
そんななか、安倍さんは安定的な親しみを見せている。もちろん、ほかの首脳たちとは立場が違う。日本は武力を放棄する憲法を持っている以上、北朝鮮の脅威もあるし、アメリカとの同盟関係は最重要事項だ。しかもそれだけではない。ヨーロッパ諸国と違って、日本国民は移民問題にあまり関心がない。アラブ諸国と違って、トランプに敵対視されているイスラム教徒もほとんどいない。中南米諸国の国民と違って、レイプ犯や人殺し、犯罪者扱いはされていない。
つまり、日本の皆さんがトランプに対してあまり怒っていない。だから、安倍さんは笑顔で楽しくゴルフやご飯会をしても、娘イバンカを異例なほど特別待遇しても、内政への悪影響を恐れる必要がない。G7の中では唯一といっていいぐらい、自由にトランプと戯れることのできる立場だ。
しかも、国民は反発するどころか、お祭り騒ぎで盛り上がっている気さえする。メディアも、「天皇陛下と会見!」「松山英樹とゴルフ!」「ピコ太郎とご飯!」と、訪問中の日程に熱心に食いついているが、首脳会談の目的や内容にはあまりこだわっていない様子だ。
もしかしたら、安倍さんもそんなスタンスをわざと取っているのかもしれない。昨年末、故郷の山口県にプーチンを誘い、大盤振る舞いでもてなした。しかし、期待されていた北方領土問題における進展はほとんどなかったため、首脳会談は失敗とみられた。一方、今回は北朝鮮問題で「歩調を合わせる」以外の目標を掲げていない。「とりあえず仲良くする」ぐらいで成功とみなされるでしょう。個人的には、せめてPPAPと同じぐらいTPPを押してほしいな~と思うけどね。
でも、この「お友達作戦」のリスクもなきにしもあらず。
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