「カジノ法案」で日本への観光客は本当に増えるのか
カジノには抵抗感があるが、MICE招致は大歓迎という人は多いのではないだろうか。そのジレンマを象徴するのが沖縄県だ。観光を主要産業とする同県では国内自治体の中でも早い段階から検討を進めてきたが、2016年秋、カジノ抜きでのMICE振興施策を県観光振興基本計画に盛り込む方針を固めた。カジノは要らないが商用観光客は欲しいという悩ましい思いが透けて見える。
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依存症対策を持たない「ギャンブル大国・日本」
カジノへの抵抗感はなぜこれほどまでに強いのか。ギャンブル依存症患者の増加や治安の悪化に対する懸念が主な要因となっている。
反対派が取り上げる事例の代表格は、韓国唯一の自国民向けカジノ、カンウォンランドだ。質屋と消費者金融が立ち並ぶ、荒廃した街の姿が紹介されてきた。
この点について岩屋議員は著書で次のように主張する。競馬、競艇、競輪、オートレースなどの公営ギャンブル。法的にはギャンブルとは認めていない「遊技場」のパチンコ店。そして宝くじ。「カジノを解禁する前から日本はある意味で『ギャンブル大国』なのです」(前掲書「3 ギャンブル依存症対策」より)
パチンコやパチスロを計算に入れると、世界のギャンブル機器の6割は日本に存在しているという。
ラスベガスやシンガポールなど他国では啓蒙活動や治療支援などの依存症対策がとられてきたが、「ギャンブル大国・日本」では体系的な対策は皆無。カジノ解禁を機にパチンコなど既存のギャンブルのユーザーを視野に入れた対策を導入するべきだと訴えている。
賛否が分かれるカジノ解禁だが、既存ギャンブルの依存症患者に対策の必要性には異論がないのではないだろうか。
そもそも、カジノは本当に儲かるの?
IR法案に関する議論では依存症対策や治安にばかり注目が集まっていた印象があるが、もう一つ気になる点がある。それは"カジノは本当に儲かるのか?"という素朴な疑問だ。
大和総研の米川誠氏の試算によると、年間1兆9800億円の経済波及効果が予測されるという。付加価値誘発額は1兆1400億円、GDPの0.2%に相当する(「IR構想の実現がもたらす経済波及効果」『週刊金融財政事情』、2016年12月19日)。
ただし、この試算は日本で3カ所のIRが開業し、シンガポール並みの収益をあげたことを前提としており、入場客数が想定を下回れば、当然それだけ経済波及効果も失われることになる。
不安を助長するのがマカオ、シンガポールのカジノ売り上げの低迷だ。カジノ売り上げ世界一のマカオだが、2013年をピークに減少に転じた。2015年の売り上げは290億ドル、前年比34%と激減だった。日本のIRのモデルとされるシンガポールも、2010年の解禁以来カジノは売り上げを伸ばし続けてきたが、2015年は前年比13%減の約50億9000万ドルにまで落ち込んでいる(それぞれマカオ統計局、シンガポール統計局のウェブサイトより)。