大滝詠一が本当に聴かせたかったのは、この音だった...『乗合馬車』に込められた思い
写真:岩崎寛
<大滝詠一ワールドの「原点」が、本人が望んだ形に近づいた日。そこには大滝のどのような思いが詰まっていたのか。『Pen Books 大滝詠一に恋をして。』より抜粋>
大滝詠一がまだ、はっぴいえんど在籍中の1972年11月25日に発表したファースト・ソロ・アルバム『大瀧詠一』は、大滝が愛してやまない60~70年代のアメリカン・ポップスやソウル、ファンクの要素と、はっぴいえんどで培ったロックのエッセンスが混在し、のちにナイアガラで結実させる音楽ボキャブラリーが炸裂する大滝ワールドの原点とも言える作品だ。
大滝は当初、シングル盤を6枚出し、それを集めて『オムニバス』のタイトルでこのアルバムを発表するアイデアをもっていたが、諸事情から断念。ちなみにそのシングル先行型のアイデアは、のちにキャロルがデビューする際に実現させることとなる。
これまでも様々な形態で発売されてきた『大瀧詠一』だが、発表からちょうど50年にあたる2022年11月25日にリリースされた50周年記念盤は、その豪華さと内容で他を圧する充実ぶりを見せつける初のCD2枚組。
当初のアイデアが反映されたタイトル『大瀧詠一 乗合馬車(Omnibus) 50th Anniversary Edition』が物語るように、大滝本人が望んでいた形に一歩も二歩も近づいた作品となった。
大滝自身が10年前に構想した曲順に13曲を並べ直したファースト・ソロ作完結盤と、初公開の未発表音源を複数収めた14曲のレア音源集からなるCD2枚組は、その内容だけでもファン必聴なのだが、なにより特筆すべきは、オリジナル・マスターテープより最新マスタリングし、大滝が望んでいたサウンドを高音質で実現した点。
豪華ブックレットも読み応えある記念盤に、感涙は必至だ。