幻の音源も収録された、大滝詠一の新作ノベルティ作品集はただごとではない
81年のインタビューで大滝は「メロディアスな曲とコミカルな曲を、対立させて捉えていました。それをやめたってことなんですよ。コミカルなアイデアがメロディアスな曲の中に存在しても、別に変わりはないんです」(『ポプシクル』81年2月号)と述べている。こうした考えで『ロング・バケイション』が生まれた、というわけだ。
大滝ほど〝新しい音頭〞を探求した人物は他にいない。その探求が、80年代に確立できたサウンド・スタイルと合流したのは当然の結果だろう。今回、Disc-2に収録された「うさぎ温泉バラード」や「新二十一世紀音頭」、細川たかしが歌った「Let's ONDO Again」などは柔和な詩情を感じさせる。
「イエロー・サブマリン音頭」に至っては歴史の重みと厚い知性を伝えつつ、軽妙さと緻密さがサウンドの中に同居している。対立するもの同士を調停するのがユーモアの役割である。
風流な空気と鋭い風刺、伝統の継承と破壊、ポップス及び邦楽と洋楽に対する否定と肯定、シリアスな視点と諧謔のまなざし、柔軟さと執念深さ、それらが共生している作品がこの新作には揃っている。大滝の生前最後の歌唱作品である「ゆうがたフレンド」の滋養はただごとではない。
この新作が広く聴かれますように。
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