「演歌も好き」英バンド「スーパーオーガニズム」を率いる日本生まれのオロノが魅せる、ならず者の音楽とは?
スーパーオーガニズムのフロントマンをつとめるオロノ 撮影:鈴木智彦
<「日本から逃げた」という彼女だが、「凱旋帰国」でその思いを祖国にぶつける。ベビーフェイスに騙されてはならない。反骨のならず者の音楽とその魅力について>
オロノがフロントマンを務めるSUPERORGANISM(スーパーオーガニズム。以下スーパー)は、昨年、セカンドアルバム『World Wide Pop』をリリースし、世界ツアーを敢行した。豪州、ヨーロッパ、アメリカ各地の巡業は肉体的・精神的に重圧の日々だったが、これまでにない充実感で、手応えがあったという。
「一番印象に残っているのはユタ州。住民の7割近くがモルモン教の信者という土地柄だから、大半はドラッグもやってないし、酒も飲んでないはずなのにぶっ飛んでた」
危ない場面もあったらしい。
「アメリカは銃社会で、対応を間違えると乱射事件のような最悪の事態になりかねないから、刺激しないよう伝えんだけど、それでキュリティ―にヤバさが伝わった」
年明けの2023年1月には日本ツアーが始まる。そのためオロノは年末から来日していたのだ。彼女は日本生まれ・育ちだから「帰国」と表現しても差し支えない。しかし、アメリカのメイン州に転校してから、彼女はずっと海外で暮らしている。
「日本が嫌いだった。俺(と彼女は言う)は逃げられたからいい。両親にはとても感謝している」
スーパーを結成しボーカルになってからも、メンバーと一緒にロンドンで暮らしていた。実際、スーパーはイギリスの多国籍バンドで欧米が主戦場だから、日本のマーケットでは「洋楽」に分類される。
オロノの音楽的バックボーンもまた、幼少期から洋楽メインだった。父親はクレージーな音楽フリークで、ハンドルを握るとカーステで『ウィーザー』などの90年代オルタナティブをぶっ続けで流し続けた。
オロノの父は、私にたくさんのCDをプレゼントしてくれたが、その中に『Zaba Duo』というデュオがあった。彼が見つけ、日本の音楽関係者に紹介したアーチストだ。エレキベースとバンデイロ(タンバリンの一種)の2人組なのだが卒倒するほどかっこいい。こうした音楽は、マニアを超えた領域の感度がなければ見つけられまい。