最新記事
シリーズ日本再発見

大阪でも受動喫煙防止条例、注目すべき点は?

2022年04月04日(月)11時00分
高野智宏

「茨木の飲食店組合に加盟しており、以前より条例は議題に上がっていましたから、組合非加盟の経営者さんより詳しい情報は入手していました。意識も高かったと思います」。そう語る三富さんは、30坪ある茨木店には喫煙ルームを設置。より小さな高槻店には、店舗外の入口付近にデッキスペースを設け、そこを喫煙場所として開放することで、喫煙者、非喫煙者を問わず来店できる店とした。

「喫煙ルームとはいえ、電話ボックスのような小さなスペースです。設置当初は面倒がられたりしましたが、今では特に大きなトラブルもない。高槻店でも、皆さん外のデッキスペースで喫煙していただけています」

自身のスペインバルでは喫煙者と非喫煙者の共生を実現している三富さんだが、飲食店組合員の視点から不安視しているのは、夫婦ふたりで切り盛りするような小さな居酒屋だという。どういうことか。

「小さな居酒屋の多くがコロナ禍では持続給付金を頼りに店を閉めていて、今回の蔓延防止措置明けで店を再開しても、常連さんが戻ってきてくれるかをとても不安がっています。しかも、居酒屋で食事も出すため、店内喫煙ができない。条例施行による不安は大きいと思いますね」

例えば三富さんのお店のように喫煙専用室を設ける場合、厚労省の「受動喫煙防止対策助成金制度」を活用することで、設置費用の3分の2(上限100万円)を助成してもらうことも可能だ。しかし、店舗の規模など適用条件に適さない店舗も多く、また、それまで同様の助成金を実地していた東京都が昨年5月で受付を終了するなど、助成金を停止や減額した自治体も少なくない。

なお、改正健康増進法による「店舗面積100平方メートル以上」の条件を超え、大阪府が「30平方メートル以上」の飲食店を原則屋内禁煙とするのは2025年4月から。違反店舗には5万円以下の罰則が課される可能性もある。

分煙環境の整備を徹底し、喫煙者と非喫煙者との共存を推し進めるためにも、助成金など行政の継続的な支援が不可欠だろう。

かつて「受動喫煙はダメだという機運を徐々に醸成し、飲食店の売上に影響しない土壌を大阪で作ろう」とTwitterで表明した吉村洋文大阪府知事、そして、自らが愛煙家である松井市長こそ、その必要性が分かっているはず。附帯決議の行方も注目されるところだ。

japan_banner500-season2.jpg

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ガザ停戦が発効、人質名簿巡る混乱で遅延 15カ月に

ワールド

韓国尹大統領に逮捕状発付、現職初 支持者らが裁判所

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性客が「気味が悪い」...男性の反撃に「完璧な対処」の声
  • 2
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 3
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 4
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 5
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 6
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 9
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 10
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 9
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中