最新記事
シリーズ日本再発見

日本唯一の「サンダーバード」公認人形師・坂本健二は「本物以上に本物」

2021年12月24日(金)11時45分
ペン編集部
坂本健二/TB(サンダーバード)造形作家

坂本健二/TB(サンダーバード)造形作家。オリジナルのキャラクター「ブルーアロー」だけでなく、マリリン・モンローなど著名人の「そっくり人形」の作例など、数々の作品を手がける。坂本の作品はぜひ、ホームページ「スターレックス STARLEX」を見てほしい。https://bluearrow.p-kit.com/  ©Pen BOOKS

<1966年に日本で『サンダーバード』が初放映されて半世紀。その日本には、本国イギリスをも唸らせる公認の人形作家がいる>

※この記事は、2022年1月7日公開の日本語劇場版『サンダーバード55/GOGO』に合わせ、Pen誌の人気特集を大幅増補&アップデートして刊行された書籍『ペンブックス サンダーバード完全読本。』より。

2013年に開催された「サンダーバード博」、そして映画公開を記念して2021年9月30日に行われたファンイベントでも、会場にサンダーバードのキャラクターたちが飾られた。この人形をつくった人物こそが、「TB造形作家」こと、坂本健二だ。「本物以上に本物」と、国内の版権管理を担う東北新社だけでなく本国イギリスも唸らせる、日本国内で唯一公認されている人形作家だ。

penbooks20211224-kenjisakamoto-2.jpg

坂本が2011年に制作したペネロープが、YouTubeチャンネル「徹子の気まぐれTV」で黒柳徹子さんと共演。「ねぇねぇ知ってる? ロンドンのペネロープ嬢と私の関係」のペネロープ・ファッションの徹子さんも必見! ©Kenji Sakamoto

penbooks20211224-kenjisakamoto-3.jpg

徹子さん絶賛の小物は、すべて妻・泰子さんの手作り。坂本がセレクトし、泰子さんは精巧な作りで応え、最後は坂本が取り付けて完成するという。洋服、アクセサリーだけでなく、ソファもお手製とは驚きだ。 ©Kenji Sakamoto

その坂本は異色の人であり、不屈の人でもある。大学でスペイン語を学び、船会社を経て貿易会社を経営していた1990年代前半、趣味ではじめたフルスクラッチの模型が人形作家としての原点だ。雑誌『宇宙船』に投稿された作品は、その精巧なつくりで誌面の常連となり、広く知られる存在となる。しかし、ちょうどその頃に阪神・淡路大震災が起こり、「一か八か、これからは好きなことをして生きていこう」と貿易会社を畳み、人形作家として生きていく決心をする。

「それからが長かったんです」と謙虚に話す坂本だが、TV番組や広告で使用されるものや個人向けのオーダーメイドの人形で、次第に軌道に乗り始める。そして、「TB造形作家」としての扉が開いたのは、2001年。自らが古くからの大ファンだったサンダーバードの人形を手がけ、東北新社に持ち込むと、「ぜひ預からせてほしい」と担当者に言われ、本国イギリスに送られた。そしてイギリスからすぐに正式な認定の返事をもらい、2002年からサンダーバードの日本唯一の公認人形師となる。「サンダーバード」の人形制作者であり、操り人形の世界的権威のジョン・ブランダール氏が来日した2004年のイベントでも、「日本代表」として対面を果たすなど、その活躍は今に至る。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

トランプ氏のロシア産原油関税警告、市場の反応は限定

ビジネス

日経平均は反発で寄り付く、突っ込み警戒感生じ幅広く

ワールド

イスラエルが人質解放・停戦延長を提案、ガザ南部で本

ワールド

米、国際水域で深海採掘へ大統領令検討か 国連迂回で
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 9
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中