日本の社会人の大半が自分の口臭を気にしている
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<歯ブラシやマウスウォッシュなどのオーラルケア製品から、錠菓(タブレット)、そして歯科の「口臭外来」まで。健康志向ビジネスの主戦場は「口の中」かもしれない>
芸能人やモデルの整った歯並びや陶器のように白い口元を見るにつけ、「芸能人は歯が命」という90年代中盤に流行したCMのコピーを思い出す。
一方、「命」かどうかは別として、近年はわれわれ一般人の間でも、歯に対するケア、そして、歯の美しさを求める意識が高まっている。審美に厳しい女性だけでなく、今では男性でも歯の健康と美しさを求める人が少なくない。
そうした意識の高まりを反映しているのが、歯ブラシやマウスウォッシュ、歯間ブラシなどのオーラルケア市場だ。大手生活用品メーカーのライオンの調査によれば、2018年の市場規模は約2405億円。前年比1.9%増と堅調に拡大している。
そんなオーラルケア市場の成長は、なにも歯の健康だけが理由ではないようだ。そこには、歯に関する悩み以上に、男女ともより切実な悩みが存在していたのである。
マーケティングリサーチを手掛けるマクロミルが昨春、20代〜60代の男女1000人に対して行った、口内の悩みとその対処法に関するアンケート結果がある。
それによると、口内の悩みに関する質問で「今までに悩んだことのある症状」を聞いたところ、61.2%で1位となった「虫歯」に続くのが、38%の「口臭」だった。対して、同じく口内の悩みで「現在、悩んでいる症状」を聞いたところ、1位は21.1%で「口臭」が逆転。現在は治療を終えたのだろうか、「虫歯」は19.2%で3位という結果だった。
さらに、「日常生活の中で口臭が気になるか」の問いには、6割以上の人が自らの口臭を気にしているという結果に(「とても気になる」と「やや気になる」を合わせた数値)。これはもう、社会人の大半が口臭に悩んでいると言ってもいいだろう。
なお、口臭の対処法としては、65.7%が「歯磨きをする」、50.6%が「ガム・飴・タブレットを食べる」と回答。なるほど、「フリスク」や「ミンティア」など錠菓(タブレット)の人気もこれで説明できるかもしれない。市場調査会社のインテージによる「食品 SRI/キャンディ(錠菓市場)」の調査データによれば、2018年の錠菓市場は300億円を超え、前年比10%増とこちらも拡大中だ。
口臭には「病的口臭」と「生理的口臭」がある
口臭に対するケア意識の高まりは、歯科医院の診察科目の変化にも表れている。虫歯治療に加え、虫歯の発生を予防する「予防歯科」や、矯正やホワイトニングなどを行う「審美歯科」が増えているが、都市圏を中心に新たに増加しつつある科目が「口臭外来」である。