最新記事
シリーズ日本再発見

平成30年間で変わった、人の趣味嗜好と街の光景

2019年04月22日(月)11時00分
高野智宏

MarsYu-iStock.

<私たちの身の回りでも、平成の幕開け当時とは大きな変化があった。楽しむスポーツ、メディア(媒体)、たばこを例に平成を振り返る>

新たな元号が「令和」に決定し、いよいよ平成の世が幕を閉じようとしている。1989年1月から始まったこの時代、政治に経済、そして社会であらゆる変化が起こったが、身の回りに目を向ければ、趣味嗜好といった側面にも平成の幕開け当時とは大きな変化が見て取れる。

◇ ◇ ◇

例えば、スポーツ。楽しむスポーツとしてかつて人気だったのが、ゴルフやテニス、冬場のスキーやスノーボードだった。「レジャー白書」によれば、スキー・スノボ人口が最大値である1800万人を記録したのは1998年(平成10年)だ。

そう、スピードスケートの清水宏保が500メートルで、フリースタイルスキーの里谷多英がモーグルで、そして、原田雅彦や船木和喜ら日の丸飛行隊がラージヒル団体で金メダルを獲得した、長野冬季オリンピックが開催された年である。

その12年前に公開された映画『私をスキーに連れてって』によりスキー・スノボのブームが訪れ、1993年(平成5年)の大ヒット曲、広瀬香美がハイトーンボイスで歌い上げたアルペンのCMソング「ロマンスの神様」がブームを牽引。そして、長野五輪の熱狂とともにピークを迎えたというわけだ。

しかし、2016年には580万人と、最盛期に比べて実に3分の1以下に減少。この間、複数のメーカーがスキー用品製造から撤退し、多くのスキー場が閉鎖を余儀なくされている。スキー場もリフト料金をディスカウントするなど対策を講じているが、いまだ回復の決定打とまでは至っていないのが現状だ。

そんな状況に対し、「でも雪質の良さや時差が少ないことを理由に、近年はオーストラリアやアジア各国からスキー客が訪れるようになっている」と言うのは、「東京プリン」の作詞担当として多くのコミックソングを世に送り出してきた伊藤洋介氏。「僕がより危機感を感じているのはゴルフです」

伊藤氏はかつてゴルフ専門誌にも連載を持っていたほどのゴルフ通だ。2007年に刊行した自伝的な著書『バブルアゲイン』でも、金曜日の夜に成田を発ち、グアムやサイパンで存分にゴルフを楽しみ、月曜早朝に帰国して出社したバブル時代の思い出を綴っている(伊藤氏は当時、絶頂期の山一證券に勤務し、バブルを謳歌していた)。

「そんなことができたのも、当時はサイパンへの直行便があったから。でもこれも日本のゴルフ人口減少を表していると思いますよ。安くなったとはいえ、プレーフィーは1回で最低8000円くらいかかるし、メンバーを集めてゴルフ場を予約する必要もある。しかも、ウエアにプレーのマナーもある。ゴルフは楽しむ前のハードルが高すぎるのです。これを根本的に解決しないと、本当にゴルフの未来はないと思います」

対して、近年人気なのがジョギングやランニング、そしてジムでの筋トレ(ワークアウト)といった、比較的始めやすく、大して費用もかからないスポーツばかり。チームスポーツではフットサル、もう少しマイナーなスポーツではボルダリングなども人気だが、いずれもハードルの低さはスキーやゴルフに比べるべくもない。

「スキーやゴルフは、基本ひとりではやらないし旅行先で楽しめるなど、一般的にはレジャー感覚が強いスポーツですよね。対してジョギングやワークアウトは個人で黙々と行うもの。個を重んじる現代社会同様、スポーツも個人で楽しむ傾向になっているのかもしれませんね」と、伊藤氏は言う。

japan190422heisei-2.jpg

LeoPatrizi-iStock.

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米国との建設的な対話に全面的にコミット=ゼレンスキ

ワールド

米、ロシアが和平合意ならエネルギー部門への制裁緩和

ワールド

トランプ米政権、コロンビア大への助成金を中止 反ユ

ワールド

ミャンマー軍事政権、2025年12月―26年1月に
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 2
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題に...「まさに庶民のマーサ・スチュアート!」
  • 3
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMARS攻撃で訓練中の兵士を「一掃」する衝撃映像を公開
  • 4
    同盟国にも牙を剥くトランプ大統領が日本には甘い4つ…
  • 5
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 6
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 7
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 8
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 9
    ラオスで熱気球が「着陸に失敗」して木に衝突...絶望…
  • 10
    【クイズ】ウランよりも安全...次世代原子炉に期待の…
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 3
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 4
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 5
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 6
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 7
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
  • 8
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 9
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 10
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 10
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中