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若者・外国人にも人気、「横丁」ブームはいつまで続くのか

2017年08月25日(金)11時45分
高野智宏

次に訪れたのが、オープンからおよそ45年という老舗のひとつ「クラクラ」。先代から引き継いだ外波山文明さんはオーナー歴約40年、劇団の主宰兼役者にして、「新宿ゴールデン街商業組合」の理事長も務める街の重鎮だ。

「僕がゴールデン街で飲み始めて50年。当時は学生運動が盛んで、文学や演劇でも若い力が台頭していた時代。サブカルチャーの発信地が新宿であり、ゴールデン街だった」と、外波山さんは振り返る。

70年代、飲んで演劇論を戦わせていた客から、酔客同士のケンカを仲裁する店主へと立場が変わった。80年代のバブル期に起こった苛烈な地上げ騒動には、オーナー有志で「新宿花園ゴールデン街を守ろう会」を組織し、反対運動を主導した。そんなゴールデン街とともに生きてきた外波山さんに、若者で溢れ外国人観光客が行き交うようになった最近の変化について聞いてみた。

「確かに若いお客さんも増えたけど、ゴールデン街は昔から若者を受け入れてきた街。僕らがそうだったようにね。ここ数年で外国人のお客さんも増えてきたけど、お通しのシステムなどを理解してくれるなら何ら問題ない。ただ、混み合ってきたら新しいお客さんに席を譲って違う店に流れるなど、馴染みの店をいくつか持っている常連さんのようなスマートな飲み方を、外国人観光客に求めるのは難しいでしょうね」

必要以上の規制強化に対する不安

新しい客層の流入に対する戸惑い以上に、今後の「横丁文化」存続に対する不安のほうが大きいかもしれない。外波山さんが何より危惧しているのは、警察や行政による必要以上の規制強化だ。

「去年までは何も言われなかった納涼感謝祭の屋台の出店位置や、撮影時の道路許可もうるさくなった。ゴールデン街はすべてが私道ですよ。それでも道路使用許可を取れという。許可するのは国ではなく僕ら組合のはずです」と、外波山さん。

「(厚生労働省が進める)受動喫煙防止対策もどうかと思う。建物内は原則禁煙にしたいらしいけど、それは店と客が決めること。店頭に喫煙可能と掲げておいて、それが嫌なお客さんは禁煙の店に行けばいいだけ」。さらに、都民ファーストの会による、子供のいる家庭内や自家用車の中も禁煙にする条例を作ろうとする動きに対しては、「やり過ぎ! 罰則ができれば密告がまかり通る世の中になっちゃうよ」と断ずる。

厚労省案どおりの法案が制定されれば、バーや居酒屋には約6500億円のマイナスの影響が出るとの調査結果もある。小規模店の多い横丁には大きな打撃になるだろう。

さらには今年4月、厚労省がアルコール健康障害対策推進室を新設したと報じられ、アルコール規制の可能性も取り沙汰されるようになった。世界保健機構(WHO)主導の規制が国際的に広がっており、欧州では酒のCMが禁止されている国や、酒類の値段を引き上げて消費量を減らした国もあるという。日本での議論はこれからだが、もし酒類の値上げ等につながれば横丁も何らかの影響を受けることは否めないだろう。

【参考記事】日本から喫煙できる飲食店がなくなる――かもしれない?

こうした規制が強まっていけば、「横丁文化」はどうなるのだろうか。さまざまな意見はあるだろうが、今の横丁の雰囲気が好きだという客は少なくない。新旧を問わず月に2度は横丁に繰り出すという、30代の女性研修講師(非喫煙者)は言う。「私のほうに煙を吹き出されたらさすがに嫌だけど、横丁とおじさんとたばこはセットみたいなものですからね(笑)。そうした昭和っぽい雰囲気が楽しいから通っているし、吸わない人もそこまでナーバスになっていないと思います」

今、横丁ブームは全国へと広がりつつある。今後はさらなる"観光地化"が進むだろう。だが、このブームがいつまで続くのかは、横丁の本来の魅力である「人と人との深い繋がり」を新しい横丁も築いていけるかどうか、そして、規制強化がどれだけ進むかに掛かっているのかもしれない。

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