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コラム
ニューズウィーク日本版編集部 From the Newsroom
「密約」の存在を、よその国に教えられて
小学校の夏休み、8月6日は登校日と決まっていた。体育館に集まって黙祷し、教室に戻って被爆者の写真や映像を見たりした。火傷でただれた皮膚の画を初めて見た日の夜、怖くて眠れなくなり、母の布団にもぐりこんだ。
少し大きくなって、「持たず、作らず、持ち込ませず」を習った。なんだか誇らしかった。
もう少し大きくなって、「核の傘」のことや「駐留米軍の費用負担」について知った。なんだかとてもがっかりした。
もっと大きくなって、「密約」が交わされていたらしいことを知った。もういい大人になっていたし、外交上、安全保障上、「機密」扱いにせざるを得ないものがあることは分かっていたつもりだ。それでも、なんだかひどく裏切られた気がした。
そして、やはり「密約」は存在していた。しかも、それがよその国の公文書で明らかにされたことがもっと悲しい。
5年ほど前、大戦後の日米関係を研究していた友人の手伝いで、メリーランド州の米国立公文書館に行ったことがある。蔵書の量と公開度、検索の効率化に驚いた。紙切れに走り書きした、ただのメモにしか見えないようなものも残されていた。スキャナー持参でせっせとコピーする人が何人も。ここを真剣に探せば、何かしら重要な史実が出てくるだろうと思わせる雰囲気だった。
一方の日本はといえば、存在するはずの文書が見当たらないらしい。情報公開法が施行される直前に、慌てふためいて燃やしてしまったらしい。
ばあさんになる頃までには、どんな新しい「密約」が明らかにされるのだろう。それらの存在もまた、どこかの国に教えてもらうのだろうか。
──編集部・中村美鈴
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