コラム

共和党支持者がバイデンを後押し? 「ウクライナ支援を減らすべき」と「イスラエル支援はそのまま」が併存する米世論

2024年01月15日(月)20時25分

さらに共和党支持者のなかには、より踏み込んだ支援の要求もある。

ギャロップの調査結果では、「イスラエル支援は適切な量」と応えた共和党支持者は37%で、民主党支持者の43%より少なかった。しかし、共和党支持者と民主党支持者の「少なすぎる」はそれぞれ37%、15%で、「適切な量」と「少なすぎる」の合計では共和党支持者の方が多かった。

この熱心なイスラエル支持とは対照的に、共和党支持者にはウクライナ支援に懐疑的な声が目立つ。「ウクライナが領土の一部を失うことになっても早期解決を目指すべき」という意見が目立つのも共和党支持者だ。

実際、共和党が議席の過半数を握る議会下院はこれまでもバイデン政権のウクライナ支援にブレーキをかけてきた。

共和党支持者のこの態度には、トランプ政権時代からの因縁をうかがえる。

2016年大統領選挙ではロシアが干渉し、トランプ当選をテコ入れした「ロシアゲート疑惑」が浮上した。その裏返しで、トランプ陣営は「バイデンがウクライナ政府と個人的に不正な関係を築いた」と主張してきた。

これに照らせば、トランプ支持者の多い共和党支持者に、バイデン政権による莫大なウクライナ支援を冷ややかにみる傾向が強くても不思議ではない。

この共和党支持者の態度が、無党派層とともに「ウクライナ支援が多すぎる」というアメリカの平均的世論を生む原動力になってきたといえる。

このように幾重ものねじれの上にアメリカの平均的世論は成り立っている。その行先は今年11月の大統領選挙にもかかわってくるだけに、バイデンはもちろんゼレンスキーやネタニヤフも無視できない。

それはもちろん、アメリカの方針に注意を払わざるを得ない日本政府もまた同様である。同盟国に足並みを揃えながらも自国の利益や立場を考えなければならない'ねじれ'は国際政治につきものなのだから。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

※筆者の記事はこちら

20241126issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年11月26日号(11月19日発売)は「超解説 トランプ2.0」特集。電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること。[PLUS]驚きの閣僚リスト/分野別米投資ガイド

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


プロフィール

六辻彰二

筆者は、国際政治学者。博士(国際関係)。1972年大阪府出身。アフリカを中心にグローバルな政治現象を幅広く研究。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、日本大学などで教鞭をとる。著書に『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、『世界の独裁者 現代最凶の20人』(幻冬舎)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、共著に『グローバリゼーションの危機管理論』(芦書房)、『地球型社会の危機』(芦書房)、『国家のゆくえ』(芦書房)など。新著『日本の「水」が危ない』も近日発売

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イスラエルがガザ空爆、48時間で120人殺害 パレ

ワールド

大統領への「殺し屋雇った」、フィリピン副大統領発言

ワールド

米農務長官にロリンズ氏、保守系シンクタンク所長

ワールド

COP29、年3000億ドルの途上国支援で合意 不
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 8
    「何も見えない」...大雨の日に飛行機を着陸させる「…
  • 9
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 10
    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story