アフリカ4カ国歴訪の岸田首相、687億円の拠出にどんな意味が
ケニアを訪問してルト大統領と握手する岸田首相(5月3日、ナイロビ) Monicah Mwangi-REUTERS
<岸田首相が約束した資金協力について、SNSを中心に「大盤振る舞い」との批判も見られるが、国家予算を投入する以上、当然「自国の影響力を増すため」という外交目標が含まれる。ただし、5億ドルが本当にムダになる可能性も>
・岸田首相はアフリカに3年間で5億ドルの資金協力を約束したことに、国内では懸念や不安もある。
・もっとも、資金協力のほとんどは貸付と民間投資で、良し悪しはともかく「自腹をきる」部分は小さいとみられる。
・ただし、中ロの牽制を念頭に、G7での評価だけを意識して資金協力を約束し、今後の対応がおざなりになるなら、5億ドルは本当にムダになるとみられる。
岸田首相がアフリカを訪問し、5億ドル(約687億円)の資金協力を約束した。諸物価が高騰するなか複雑な思いを抱く人も多いだろうが、日本が今後アフリカをおざなりにするなら、この資金協力は本当にムダになるといえる。
アフリカへの協力は必要なのか
岸田首相は5日、アフリカ歴訪から帰国した。今回、岸田首相は4月30日のエジプトを皮切りに、約1週間かけてガーナ、ケニア、モザンビークのアフリカ各国を巡った。
その最中の5月2日、ガーナのアクフォ=アド大統領との会談で、岸田首相はアフリカ各国に対して3年間で5億ドルの資金協力を行うことを約束した。
昨年8月の第8回東京アフリカ開発会議(TICAD8)で日本政府はアフリカに対して「3年間で300億ドルの協力」を約束していた。今回の約束は、これに追加したものだ。
こうした資金協力が国内で好意的に受け止められているとは限らない。昨年のTICAD8の際もそうだったが、今回もSNSを中心に「日本が大変な時期に」といった懸念や疑問が噴出したからだ。
そうした言い分も理解できなくはないが、その一方で大きなカン違いも見受けられる。
こうした懸念や疑問には「日本がタダで(しかも善意100%で)資金を渡している」という思い込みがあるとみられる。
しかし、日本政府はそれほど気前よくもなければ、博愛精神に富んでいるわけでもない。
日本の資金協力は「貸す」中心
そもそも援助には贈与(返済義務はない)と貸付(返済義務がある)の2種類があるが、日本は他の先進国と比べて貸付の割合が高い。
経済協力開発機構(OECD)の統計によると、2022年に先進国(開発援助委員会[DAC]加盟国)29カ国が途上国向けに提供した政府開発援助(ODA)は総額2039億ドルで、このうち日本からのものは約174億ドル(約8%)だった。
ところが、同じ時期に先進国が提供した二国間貸付は総額約142億ドルだったが、日本はそのうちの約89億ドル(約62%)を占めた。
つまり、その良し悪しはともかく、欧米諸国が「あげる」タイプ中心なのに対して、日本は圧倒的に「貸す」タイプが多いのだ。
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