日中の「援助競争」はアフリカの自助努力を損ないかねない
日本政府は「2019年のTICAD7で約束した200億ドルの民間投資という約束はほぼ達成した」と強調するが、この3年間でアフリカにおける日本の対外直接投資残高はほとんど変化していない。つまり、200億ドルの新規投資があったとしても、それと同じくらい流出したということだ。
感染症やテロなどのリスク、さらに経済停滞に直面して不採算部門を削減するなかで、企業がアフリカ向け投資を引きあげることはやむを得ないだろう。
しかし、成果に関する検討も不足しがちなままで日本政府がアクセルを踏み続けることは、むしろ中国と張り合うこと自体を目的化することにもなりかねない。それは日本の持続性という観点だけでなく、アフリカの自助努力を損ないかねないという意味でも疑問が多い。
その意味で、日本がアフリカと向き合ううえでは、これまでの成果と内容を再検討することから再スタートする必要があるだろう。中国とのレースに心を奪われて、ただ金額を競っていては、むしろアフリカの心をつかむことも難しいのだから。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。
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