プーチンとの蜜月を否定する欧米の「友人」たち──フランス大統領選への余波
それは親ロシア派極右の政治家の多くに方針転換を余儀なくさせる原動力になっている。例えば、トランプの片腕だったペンスは3月4日、身内ともいえるアメリカ共和党の政治家に向けて「プーチンの擁護者はいらない」と言明した。
共和党内部の親ロシア派に釘を刺した格好だが、これはかつてのボス、トランプを念頭に置いている。ウクライナ侵攻直前の2月、トランプがプーチンを「天才」と絶賛していたからだ。
ただし、トランプほど露骨でないとしても、ペンス自身もやはりロシア寄りとみなされてきた。例えば、ロシアによるクリミア併合後、アメリカは経済制裁を強化したが、その最中でもペンスは「ロシアとはイスラーム過激派対策などで協力できる」と強調し続け、共和党内部からも批判や懸念を招いた。
「友人」の怨念
立場の変更は政治家につきものと言ってしまえばそれまでだが、それは欧米各国の今後に思わぬ影響をもたらす可能性がある。
フランス大統領選挙を振り返ると、これまでルペンはEUに批判的で、イギリスのEU離脱も支持してきた。EUは移民や環境対策、教育に至るまで、あらゆる分野でヨーロッパ共通の基準を導入してきたが、ルペンなど極右はこれが国家主権を損なうものと反発し、諸悪の根源のように扱ってきたのである。
しかし、ルペンは大統領選挙キャンペーンのなかでEU批判のトーンを弱めている。そこにはロシアとの対抗上、ヨーロッパ各国がこれまで以上に協力するべきという世論が強まってきたことがある。
ルペンや国民連合は、EU統合や移民受け入れを大前提とする既存政党との違いを前面に押し出して支持を広げてきた。そのルペンにとって反EUのトーンダウンは他の政党・候補との違いを不鮮明にするものだが、現状でこれまで通り反EUを叫ぶことは政治的リスクが大きすぎる。
その意味で、欧米の「友人」たちがプーチンに対して「余計なことをしてくれた」と思っても不思議ではない。極右政治家との関係を通じて欧米に勢力を浸透させてきたロシアは、ウクライナ戦争でその「前線基地」にも爆弾を落としたといえるだろう。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。
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