「カリフォルニア大火災は左翼テロ」──陰謀論でトランプを後押しする極右
また、トランプ支持が鮮明なFOXニュースが運営するネットニュース、Q13FOXはさらに具体的に「ワシントン州ピュアラップで36歳のアンティファの男性メンバー、ジェフ・アコードが逮捕された」と報じたが、これも当局によって否定されている。
アメリカ大統領選挙が本格化するなか、西海岸に広がるかつてない大火災を、アメリカ極右は政治的に利用しているようだ。
各種の世論調査でみる限り、選挙戦は混戦が続く。その最中の大火災の責任をアンティファに被せることは、最終的にはアンティファを「国内テロ」と呼ぶトランプ氏を後押しすることになる。
ロシアの選挙干渉か
マザージョーンズの取材によると、ネット上で拡散するこうしたフェイクニュースには、ロシアの関与も見受けられる。
「アンティファ放火説」がSNSで大量に出回り始める直前の9月9日、ロシア・トゥデイ(RT)は「オレゴン州ポートランドの警察署がアンティファメンバーに、山火事が広がっているので、デモなどで火を用いないよう求めた」と報じた。
ポートランド警察の発表そのものは事実だ。
しかし、この記事でRTは極右活動家として知られ、アンティファやBLMにも批判的なアンディ・ンゴ氏のツイートを再三引用している。ンゴ氏はポートランド警察の「デモ参加者には火の使用を控えるよう求める。最近の強い風と乾燥により、火は広がりやすく、多くの生命を脅かす」というツイートを「アンティファはこれを聞いてワクワクしていた」と引用リツイートしたが、RTはこれもそのまま掲載している。
Antifa in Portland are thrilled to hear this. https://t.co/3zBEarFHPR
— Andy Ngô (@MrAndyNgo) September 9, 2020
ポートランド警察は「ワクワクしている」とは発言しておらず、ンゴ氏のツイートやそれをそのまま引用したRTの記事は控えめに言ってもただの思い込みで、よりはっきり言えば印象操作に当たる。
RTはロシア政府系メディアである。
2016年の大統領選挙でも、フェイクニュースを通じたロシアの干渉は指摘されていた。カリフォルニア大火災をめぐるRTの報道からは、今回もロシアがアメリカ大統領選挙に関わろうとしていることがうかがえる。
スケープゴートを求める人々
歴史上、権力者に批判的な人々への弾圧に、大火が口実として用いられた例は多い。
ローマ大火(64年)の後、信者を増やしつつあったキリスト教徒が犯人と決めつけられ、多くが処刑された。また、1933年のドイツ国会議事堂炎上は共産主義者の仕業と決めつけられ、その後のナチス支配を確立させる一歩となった。
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