日独GDP逆転の真相
過去2年の大幅な円安が起きたことよりも、2012年頃まで行き過ぎた通貨高に直面して、先進各国の中で日本だけが低インフレとともに低い成長率に直面した。これが、日独GDP逆転の本質である。
1990年代後半からデフレが長年解消されなかった背景には、保守的な政策当局者が脱デフレに不十分な対応に終始し、緊縮的な経済政策が続いたことが大きかった。そして、こうした政策姿勢には、「貨幣(通貨)価値」を高めることを重視する偏った貨幣観を、多くの人が抱いていたことが影響していた、と筆者は考えている。
そして、こうした偏った貨幣観が依然根強く残っていることが、大幅な円安やドルベースの名目GDPの低下を、必要以上に問題視する見方に影響しているのかもしれない。ただ、貨幣価値を高めることに拘り過ぎると経済成長を阻害してしまう、ことを我々は教訓にするべきではないか。
日本>ドイツと再逆転する可能性は十分ある
ところで、2023年のGDPの日独逆転は、為替市場の変動がもたらした部分が大きいが、今後過去2年のような円安が続く可能性は高くないだろう。日本経済が正常化の道筋を辿りつつある中で、大幅な円安は修正される余地がある。また、デフレ完全脱却とともに、日本の名目GDPは今後伸びると伸びると予想される。このため、2024年以降、ドル換算の名目GDPでみれば、日本>ドイツと再逆転する可能性は十分ある、と筆者は考えている。
(本稿で示された内容や意見は筆者個人によるもので、所属する機関の見解を示すものではありません)

アマゾンに飛びます
2025年2月25日号(2月18日発売)は「ウクライナが停戦する日」特集。プーチンとゼレンスキーがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争は本当に終わるのか
※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら
トランプ政権の外圧で「欧州経済は回復」、日本経済の停滞は続く 2025.02.19
トランプ政権の関税引き上げが日本株の脅威になる理由(ただし、間接的に) 2025.02.06
中国経済の失速・デフレ化が世界金融市場の「無視できないリスク」になる 2025.01.08
【2025年経済展望】期待しづらい中国、外部環境に脆弱な日本、2%成長が続く米国 2024.12.27
日本から学ばず、デフレ・経済停滞から抜け出せなそうな中国 2024.12.12
日本はトランプ政権に「身構える」よりも「見習う」べき 2024.11.28
トランプ再登板・関税引き上げで米経済はどうなるか...「日本経済には追い風」と言える理由 2024.11.12