コラム

好調な経済は、米国株市場のリスク?

2024年02月06日(火)18時30分

米国株市場では、いつ「スピード調整」が起きてもおかしくない

FRBは、23年夏場まで高インフレへの対処で、政策金利の引き上げを迫られてきた。ただ、23年後半から一転してインフレ抑制が順調に進んだため、FRBの「政策対応の自由度」は半年前からは様変わりした。仮に、商業用不動産の調整が強まるなどを契機に、米国の経済活動にブレーキがかかっても、これに対してFRBは利下げによって迅速に対応できるとみられる。

インフレ抑制が進みFRBの政策対応の自由度が高まっていることが、昨年11月初めからの、米国の株高の最大の要因だろう。S&P500は1月半ばに22年初の史上最高値を上回り、FOMCなどのイベントを経て、2月初旬にも史上最高値を更新している。

一方で、いわゆる「大型メガキャップ株」(マグニフィセントセブン)の株高が、株式市場全体を牽引する状況が年初から再び強まっている。2000年頃のITバブル期と比較して、ハイテクなどの銘柄に偏った今の株式市場は持続しないとの見方は散見され、筆者自身も今の米国の株式市場にやや危うさを感じている。短期的にみれば、11月初めからの米国市場の株高のピッチは極めて速く、いつ「スピード調整」が起きてもおかしくないだろう。

 

しかし、「行き過ぎた株高」とまでは言い難い

ただ、先に説明したように、米国経済の最大の問題だったインフレ制御については、FRBの対応が成功しつつある、という大きな構図は変わらない。「好調過ぎる経済」に対する懸念は今後和らぐ中で、先に述べたようにFRBは年央までに利下げに踏み出すだろう。であれば、S&P500指数が史上最高値にあることだけをもって、「行き過ぎた株高」とまでは言い難いと思われる。

(本稿で示された内容や意見は筆者個人によるもので、所属する機関の見解を示すものではありません)

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プロフィール

村上尚己

アセットマネジメントOne シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、証券会社、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に20年以上従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。『日本の正しい未来――世界一豊かになる条件』講談社α新書、など著書多数。最新刊『円安の何が悪いのか?』フォレスト新書が2025年1月9日発売。

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