コラム

『エクソシスト』は「怖い」「気持ち悪い」だけじゃない、滋味にあふれた名作ホラーだ

2025年04月04日(金)16時45分

でも狼男やドラキュラやフランケンシュタインはどちらかといえばモンスターだし、悪魔崇拝をテーマとした『ローズマリーの赤ちゃん』も、悪魔そのものの恐怖よりも悪魔を崇拝する人たちと妄想の怖さに比重があったと記憶している。

ところが、本作で幼いリーガンに憑依する悪魔パズズの存在はリアルだ。妄想や脳内現象などには逃げない。

パズズと対峙するカラス神父が精神科医の肩書も併せ持つという設定が示すように、リーガンに起きた急激な変化を脳内現象として精神科医や脳外科医たちは対処しようとするが、すぐにお手上げとなる。


四肢を縛られたリーガンが横たわるベッドは激しく揺れ、初対面のカラスが実の母を看取れずに死なせたことに苦悩しているのをパズズはあっさりと見抜き、リーガンの母親クリスの友人であるバークは、リーガンを訪ねた直後に首が180度反対方向にねじられた遺体で発見される。

カラスが抱える母親についての苦悩と後悔は、カラスの信仰の揺れを示している。

その対極の存在として終盤でパズズと対峙するメリン神父は、信仰的に純化した存在であるはずなのに、悪魔祓(ばら)いに失敗して息絶える。神は救ってくれないのだ。

プロフィール

森達也

映画監督、作家。明治大学特任教授。主な作品にオウム真理教信者のドキュメンタリー映画『A』や『FAKE』『i−新聞記者ドキュメント−』がある。著書も『A3』『死刑』など多数。

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