アメリカン・ニューシネマの代表作『いちご白書』を観た日が僕のターニングポイント
実際に起きたコロンビア大学の学生運動を題材にした『いちご白書』は、まさしくアメリカン・ニューシネマにおいて典型的な作品だ。主人公のサイモンは女の子のナンパが目的で学生運動に関わり、大学のバリケード内で出会ったリンダと恋に落ちながら社会のさまざまな矛盾や不合理に気付いて真剣に運動を始める。だが最後には突入してきた機動隊員に、リンダや仲間たちと共に蹴散らされ踏みにじられる。痛烈な国家権力批判であり、不条理で無慈悲なベトナム戦争のメタファーであり、そして切ないラブストーリーだ。
クラスメイトには先に帰ってもらい、僕は同じ席に座り続けて、もう一度『イージー★ライダー』と『いちご白書』を観た(当時の名画座ではそれが可能だった)。
上映が終わったときは日が暮れていた。家に向かう道を一人で歩きながら、僕は何度も、映画ってすごいとつぶやいていた。まさしく僕にとってターニングポイントになる一日だった。
『いちご白書』(1970年)
監督/ハグマン・スチュアート
出演/ブルース・デイビソン、キム・ダービー、バッド・コート
<本誌2023年10月31日号掲載>
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