コラム

『竜馬暗殺』は社会の支持を失った左翼運動へのレクイエム

2020年07月18日(土)11時45分

こうして社会の支持を失った日本の左翼運動は壊滅的なダメージを受ける。反体制や左翼的運動を標榜しながらドキュメンタリーを撮っていた黒木和雄や田村正毅たちも同じ衝撃を受けたことは想像に難くない。映画に描かれる「ええじゃないか」は、個の理念やイズムなどひとまとめにのみ込む社会の集合無意識へのメタファーで、『竜馬暗殺』は自分たちへのレクイエムだ。

もちろん当時の僕にそこまでの見方はできない。その知識も視点もない。でも胸の裡(うち)で呼応する何かがあった。映画とはそういう存在だ。

houga200718-cover01.jpg『竜馬暗殺』
監督/黒木和雄
出演/原田芳雄、石橋蓮司
   中川梨絵、桃井かおり

<本誌2020年3月3日号掲載>

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プロフィール

森達也

映画監督、作家。明治大学特任教授。主な作品にオウム真理教信者のドキュメンタリー映画『A』や『FAKE』『i−新聞記者ドキュメント−』がある。著書も『A3』『死刑』など多数。

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