若かりしショーケンと田中邦衛の青春映画『アフリカの光』をDVDでは観ない理由
ストーリーはこれ以上ないほどに平板だ。アフリカに船で行くことを夢見る2人の男が、北海道の港町で冬を過ごす。生活のために2人はイカ釣り船に乗る。港の女と知り合い体を重ねる。2人はけんかをして1人は故郷に戻る。結末は覚えていない。おそらく結末が意味を持つ作品ではない。覚えているのは、2人の男のだらだらとした日常。そして唐突にインサートされるアフリカのまぶしい光に満ちた数秒のカット。
生きることの切なさを実感した。......無理やりに言葉にすればそういうことになるのかな。いや無理やりに言葉にする必要はない。名画座の窮屈な椅子に座ってスクリーンを凝視する僕の体中に、この映画は深く突き刺さった。それは確かだ。
それからもう30年以上が過ぎた。この原稿を書きながらネットで検索したら、DVDは市販されているようだ。でも観ない。観たくないわけじゃない。でも観ない。そんな映画が1本くらいはあってもいい。
『アフリカの光』
©1975 TOHO CO., LTD.
監督/神代辰巳
出演/萩原健一、田中邦衛、桃井かおり、高橋洋子
<本誌2020年2月18日号掲載>
【話題の記事】
・科学者数百人「新型コロナは空気感染も」 WHOに対策求める
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・新型コロナ、血液型によって重症化に差が出るとの研究報告 リスクの高い血液型は?
・韓国、日本製品不買運動はどこへ? ニンテンドー「どうぶつの森」大ヒットが示すご都合主義.
2020年7月14日号(7月7日発売)は「香港の挽歌」特集。もう誰も共産党を止められないのか――。国家安全法制で香港は終わり? 中国の次の狙いと民主化を待つ運命は。PLUS 民主化デモ、ある過激派の告白。
偶然が重なり予想もしない展開へ......圧倒的に面白いコーエン兄弟の『ファーゴ』 2024.11.22
韓国スパイ映画『工作』のような国家の裏取引は日本にもある? 2024.10.31
無罪確定の袴田巖さんを22年取材した『拳と祈り』は1つの集大成 2024.10.19
『シビル・ウォー』のテーマはアメリカの分断だと思っていたが...... 2024.10.12
台湾映画『流麻溝十五号』が向き合う白色テロという負の歴史 2024.09.10
アメリカでヒットした『サウンド・オブ・フリーダム』にはQアノン的な品性が滲む 2024.08.30
成熟は幻想、だから『ボクたちはみんな大人になれなかった』の感傷を共有する 2024.07.27