習近平は豹変する
中国だけが強い行動制限を続けていることに対して市民の間で不満が高まり、2022年11月には各地でデモが起きた。12月の政策転換は世界の流れや国民感情を考えればしょうがなかった。ただ、政策転換後に予想外に感染が急拡大し、死者も急増したので、転換前に中国政府が言っていた懸念もあながち誇張ではなかったことを逆に証明する結果となった。
昨年12月の第二の大きな変化、それは12月に開催された中央経済工作会議である。こちらの方に注目した日本のマスコミはなかったが、私は注目すべき変化があったと思う。
中国共産党の最高幹部たちは毎年12月に中央経済工作会議を開催して翌年の経済政策の基調を決める。昨年12月15~16日に開催された同会議では、成長と雇用と物価の安定を重視するというコロナ禍以来の経済政策の基調を2023年も維持することを決めた。2022年は厳しいゼロコロナ政策を採ったことによりGDP成長率が3%と低迷したが、それでも成長の回復を焦ることはせず、安定重視で行こうということである。
この点では昨年までの方針を踏襲するものであるが、同会議で示された経済体制に関する方針は前年(2021年)までの中央経済工作会議とは大きく様変わりした。一言でいうと、これまでの民間企業統制の流れから一転して民間企業を重視する姿勢を鮮明にしたのである。
統制から民間活力へ
過去2年の中央経済工作会議では国有企業の役割を重視する一方、大手民間企業を抑えつける方針が示されていた。2020年12月の中央経済工作会議の決定では「反独占を強化し、資本の無秩序な拡張を防止しなくてはならない」として、特にプラットフォーム企業の独占に対する取り締まりを強めることがうたわれていた。実際、2021年4月にはアリババに対して独禁法違反で3000億円にも上る巨額の罰金が科され、6月には配車大手の滴滴がアメリカで株式上場したら、その直後に国家安全を脅かすとして調査が入り、アプリの配布停止を命じられ、後に高額の罰金が科された。
2021年12月の中央経済工作会議の決定は「資本に対して信号機を設けて(何をやってよいか、いけないかを示し)、資本に対する有効な監督を強化し、資本の野蛮な成長を防止しなければならない」と、さらなる規制強化を示唆していた。2022年10月の第20回党大会における習近平の演説では、ベンチャー育成のスローガンとして2014年から李克強首相がたびたび口にしていた「大衆創業、万衆創新( 大 衆 の 起 業 、万 人 の 革 新 )」には言及しなかった。そのため、党大会後に国有企業重視、民間企業統制の方針がさらに強まるように思えた。
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