電力逼迫は、太陽光発電のせい?
社会の中にさまざまな蓄電手段を増やしておくことも重要であろう。蓄電手段として、揚水発電所は特に効果的である。揚水発電所では、太陽光や風力による電気が余っている時には電気を利用して水を汲み上げ、電力需要が多い時には水を流して発電する。実は、原子力発電所も出力調整が難しいので、揚水発電所を必ずセットで建設する必要がある。また、まだ高価ではあるものの、蓄電池の設置も推進されるべきだろう。
また、特に冬場に有効な手段として、ヒートポンプ式給湯器(エコキュート)を使い、電力が余っている時間帯に熱水の形でエネルギーを貯めておくことも有効である。この他、余った電力を使って水を電気分解して水素を作り、燃料電池車の燃料などに使うという手もある。
要するに、太陽光発電や風力発電が天候に左右されるということを前提としたうえで、それでも再生可能エネルギーの利用を増やしていく必要があるし、その不安定性に対応する手立てを講じることは政府と電力事業者に課せられた責務なのである。アメリカのトランプ前大統領のように、温室効果ガスによって気候変動が起きるなんて話はフェイクだ、排出削減の約束も守らない、というのであればともかく、排出削減はやはり必要だというのであれば、太陽光発電の出力が午後3時以降減ることに文句を言ってもしょうないのである。
電力逼迫は東電のミス
『日本経済新聞』(7月1日付)では、電力逼迫に陥ったより詳しい背景が解説されている。それによると、東京電力は夏場の電力需要の増加を見込んで、6月には火力発電所6基の点検と補修をし、6月30日から順次稼働する予定であった。ところが、思いがけず6月25日から猛暑が到来してしまい、補修中の火力発電所を稼働できなかったため、電力需給が逼迫した、というのである。
この話をテレビ向けに短く要約すると、電力逼迫の原因は「東京電力が6月25日から急に暑くなるとは予想していなかったため、火力発電所の点検・補修を酷暑の時期に行うというミスを犯したこと」にあり、責められるべきは太陽光発電ではない。もし誰かを責めるとしたら、天候の見通しを誤った東京電力やそれを監督する立場にある経済産業省、あるいは早い梅雨明けを予想していなかった天気予報であろう。敢えて太陽光発電の話にふれる必要があるとしたら、なぜ午後3時から6時の時間帯に節電する必要があるのかを説明する時のみである。
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