中国、2年ぶりのマイナス成長か
2020年に武漢でコロナ禍を抑え込んだあと、欧米がもっと悲惨な状況になったことを考えると、中国は人類のなかで最初にこの未知のウイルスにさらされた割には上手に危機を切り抜けたと評価できる。少なくとも中国政府はそう自負してきた。だが、2022年の上海のロックダウンはその成功体験がかえって仇となってしまった観がある。武漢を襲った時と比べてかなりおとなしくなったウイルスに対処するのに、武漢の時と同様の苛烈な手段を使う必要はなかった。中国の企業が新型コロナへの感染を予防するワクチンをいち早く開発したことは評価できるし、実際、中国産ワクチンに頼っている途上国も多数にのぼる。しかし、中国産ワクチンは変異株に対する効力が弱いようで、2021年9月以降、中国産ワクチンの輸出は停滞している。上海での新型コロナの致死率が東京の10倍にもなっているのはワクチンの効き目の違いによるのかもしれない。
このように、中国は武漢でのロックダウンと国産ワクチンの早期開発という二つの成功体験があったために、以前よりも感染力は強まったが毒性は弱まった変異株に対処するには不適切な対処法に囚われてしまっているようである。2020年にコロナ禍が欧米や日本などに広まった時には、欧米や日本がどうして中国の経験に虚心坦懐に学ぼうとしないのか歯がゆく思ったものだが、2022年には、むしろ中国の側が諸外国の経験に学び、ワクチンも外国産のものの方が有効なのであれば輸入すべきだと思う。
『日本経済新聞』2022年4月8日付の記事によると、上海市政府は当初は大規模な都市封鎖に頼らずに、最小限のコストで感染を抑え込もうとしていたという。ところが、4月2日に中央から孫春蘭副首相が上海に派遣され、強い措置をとって感染を抑え込めとの習近平指導部の意向が伝えられた可能性があるという。
もしこの解釈が正しいとするならば、中国の政権のなかにも強硬なゼロコロナ政策を採るべきだと考える人々(ゼロコロナ派)と、経済との共存を図るべきだと考える人々とがいることになる。4,5月の経済の落ち込みや高い失業率はゼロコロナ派にとって不都合な数字である。7月中旬に発表される第2四半期(4~6月)のGDP成長率が仮にプラスになれば、ロックダウンを行っても中国経済には回復力があるということを証明するので、ゼロコロナ派の勢いが増し、マイナスになればゼロコロナ派は面目を失う可能性がある。まずは、7月中旬の経済統計の発表に注目することにしよう。
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