消費税ポイント還元の追い風の中、沈没へ向かうキャッシュレス「護送船団」
最近の調査でも、利用割合がもっとも高かったのがPayPay、第2位がLINE Pay、第3位が楽天ペイで、銀行系はゆうちょペイが10位、りそなウォレットが17位、みずほ銀行系のJ-Coin Payが23位と下位に沈んでいる(MMD研究所「2019年7月 QRコード決済利用動向調査」)。また、セブンイレブンの7Payが今年7月にサービスが始まったと思ったら不正利用が相次いで1か月後には撤退を決めたのも記憶に新しいところである。
QRコード決済業界のなかでは下位に沈む大手銀行や大手小売業者らが、「QRコード決済が乱立すると小売店や消費者が混乱する」といった理由をつけて、経済産業省の力を使って先行勢力に待ったをかけようとしたというのがこの規格統一の本質だった。結局、QRコードの規格統一は、政府の規制によって大手も中小もつぶれないように守っていく、という高度成長時代に日本の銀行業で行われていた「護送船団方式」の再現を狙ったものであった。
上位2社は不参加
だが、幸か不幸か日本政府が民間企業に対して行使できる力は高度成長期に比べてはるかに弱まっている。今年8月になって上位2社のPayPayとLINE Payは店舗に掲示するタイプのQRコード統一規格に参加しないことが明らかになったのである。
この2社が不参加を決めたのは、PayPayはアリペイ、LINE PayはWeChat Payとすでに規格を統一していて、海外(主に中国)でこれらを使っている人々が日本に来てもそのまま使えるようにしているからである。営業活動もしないような国内の弱々しい業者と同じ船団にいるよりも、何億人ものユーザーのいる海外の船団に入る方が有利と考えるのは当然である。
2社が統一規格に参加しないことを伝えた日本経済新聞(8月14日付)の記事には「キャッシュレスに逆風」という見出しがついていたが、まったく逆だと思う。むしろ不参加を決めたことで、上位2社はフリーライドされる心配もなく、これからも営業に励み、彼らが先導役となってQRコード決済が普及していくことになるだろう。そして護送船団に入ってフリーライドしようとしていた業者たちは、船団ごと淘汰されることになるだろう。乱立の問題を解決するには結局そうやって弱い業者、やる気のない業者を淘汰していくしかないのである。
EVと太陽電池に「過剰生産能力」はあるのか? 2024.05.29
情報機関が異例の口出し、閉塞感つのる中国経済 2024.02.13
スタバを迎え撃つ中華系カフェチェーンの挑戦 2024.01.30
出稼ぎ労働者に寄り添う深圳と重慶、冷酷な北京 2023.12.07
新参の都市住民が暮らす中国「城中村」というスラム 2023.11.06
不動産バブル崩壊で中国経済は「日本化」するか 2023.10.26
「レアメタル」は希少という誤解 2023.07.25