泥沼化する米中貿易戦争とファーウェイ「村八分」指令
そしてアメリカの中国に対する最終兵器が5月15日に炸裂した。それは華為技術(ファーウェイ)を輸出管理法に基づく輸出規制の対象(エンティティーリスト)に加えたことである。アメリカの企業がファーウェイに部品やソフトウェアを売ろうとするときには商務省に申請して許可を得なければならなくなったが、一般に申請は許可されないという。昨年4月に中興通訊(ZTE)がイランに不正輸出を行ったとして同様の制裁を科され、スマホの工場の稼働が止まるほどの窮地に陥ったことは記憶に新しい。その時は中国政府がアメリカ政府と交渉して、アメリカ企業との取引禁止から罰金に「減刑」してもらうことで何とか難局を乗り越えた。
一方、ファーウェイはZTEを上回る技術力を持つハイテク企業で、簡単に窮地に陥るとも思えないが、アメリカ政府も周到にファーウェイを追い詰めようとしている。まず昨年4月にアメリカ連邦通信委員会(FCC)は米政府の補助金を使う通信事業者がファーウェイとZTEの機器を使うことを禁じる措置を決めた。
さらに昨年8月に成立した国防権限法2019は、アメリカの政府機関がファーウェイ、ZTEなど中国企業5社の通信機器や監視機器を使用することを禁じ、さらにこれらの企業の機器を利用している企業からの調達まで禁止した。
他国も制裁の巻き添えに
そしてこのたびの輸出管理法はアメリカの企業がファーウェイに対して機器、部品、ソフトウェアなどを輸出することを事実上禁ずる、というだけではなく、他国企業がアメリカ企業の部品やソフトなどを含むものをファーウェイに売ることにも規制の網をかけている。もしこの規制を破れば、今度はその企業がアメリカ企業との取引禁止や罰金などの制裁を受けることになる。
つまり、アメリカ企業がファーウェイに何かを売ったり、ファーウェイから何かを買ったりするのを制限するというだけでなく、ファーウェイと取引するような企業は他国の企業であってもアメリカの政府調達から締め出されたり、アメリカ企業との取引を禁止されるといった制裁が科されるというのである。
これはアメリカ企業だけでなく、アメリカと取引のある他国企業にもファーウェイを「村八分」にすることを強要する政策である。いかにもいじめっ子(bully)のトランプ大統領らしい策略だが、これに巻き込まれる企業はたまらない。
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