コラム

中国で歯の治療をしたら凄かった──逆メディカルツーリズム体験記

2017年12月04日(月)17時43分

ドイツ製の最新鋭機器を使い、コンピューター上で3Dモデルを制作する(写真提供:筆者)

<ひょんなことから中国の片田舎で歯の治療を受けることになったが、韓国、ドイツ、アメリカで学んだという「海亀派」院長が経営する歯科医院は、最新鋭の機器を備え、驚くほどハイレベルだった>

こんにちは、新宿案内人の李小牧です。

皆さんは「メディカルツーリズム」(医療観光、医療ツーリズム)という言葉をご存じだろうか。海外に出向いて治療を受けることを意味する。

近年、日本政府もメディカルツーリズムの拡大を目指している。主なターゲットは中国の富裕層だ。がん治療などで日本の先進的な治療に期待を寄せる中国人富裕層は確かに多い。私にまで「メディカルツーリズムの会社を作ろう」などと中国人企業家からお誘いがかかってくるほどの注目分野である。

一般的なメディカルツーリズムでは(日中の関係においては)中国人が日本で治療を受けるのだが、私は今回、ひょんなことから「逆メディカルツーリズム」を体験することになった。そう、日本人である私がわざわざ中国に出向いて治療を受けたのだ。

「元・中国人、現・日本人」の私は元祖国の中国も、現祖国の日本も愛している。だが医療に関しては日本のほうが信頼できると思っていた。その私が「逆メディカルツーリズム」を試みることになったのはある出会いがきっかけだ。今年夏、私の中国人ファンが日本にやって来た。話を聞くと、吉林省吉林市盤石市で歯科病院を経営する院長先生だという。

昔の話で恐縮だが、「芸能人は歯が命」というCMがあった。だが私に言わせると、「政治家も歯が命」だ。中国で頻繁に番組出演の機会があるし、清潔感ある政治家になるためにはきれいな白い歯が欠かせないと、私は毎月、歯のクリーニングに通っている。

だが、クリーニングだけでは限界がある。そろそろ、虫歯で痛んだ歯を治療し、きれいに修繕する大工事が必要なタイミングだった。とはいえ、保険がきかない治療だけに日本では100万円も掛かるのだという。しかも治療に必要な期間は1年間だ。

ところが、その院長先生によると、彼の病院ならばたった50万円で、しかも1日の治療で全てを終わらせてくれるという。物価の差はあるとはいえ、本当にそんなことが可能なのか......。不安もあったが、いいネタになるという思いもあって、この「逆メディカルツーリズム」にチャレンジすることにした。

田舎ですらこれほどハイレベルな病院があるのだから...

盤石市は中国の片田舎にある小さな町だ。そんな町の病院に期待は禁物だと思っていたが、いい意味で裏切られた。到着してみると、件の歯科医院は立派な建物で、中には最新鋭の機器がいっぱいだ。院長先生は最初に韓国で学び、その後はドイツ、アメリカで学んだ「海亀派」(留学帰国組を意味する中国語。帰国派と似た発音からつけられた掛け言葉)だという。

lee171204-1.jpg

歯科医院で「熱烈歓迎」されてしまった(写真提供:筆者)

プロフィール

李小牧(り・こまき)

新宿案内人
1960年、中国湖南省長沙市生まれ。バレエダンサー、文芸紙記者、貿易会社員などを経て、88年に私費留学生として来日。東京モード学園に通うかたわら新宿・歌舞伎町に魅せられ、「歌舞伎町案内人」として活動を始める。2002年、その体験をつづった『歌舞伎町案内人』(角川書店)がベストセラーとなり、以後、日中両国で著作活動を行う。2007年、故郷の味・湖南料理を提供するレストラン《湖南菜館》を歌舞伎町にオープン。2014年6月に日本への帰化を申請し、翌2015年2月、日本国籍を取得。同年4月の新宿区議会議員選挙に初出馬し、落選した。『歌舞伎町案内人365日』(朝日新聞出版)、『歌舞伎町案内人の恋』(河出書房新社)、『微博の衝撃』(共著、CCCメディアハウス)など著書多数。政界挑戦の経緯は、『元・中国人、日本で政治家をめざす』(CCCメディアハウス)にまとめた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル首相らに逮捕状、ICC ガザでの戦争犯罪

ビジネス

米新規失業保険申請は6000件減の21.3万件、予

ワールド

ロシアがICBM発射、ウクライナ発表 初の実戦使用

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部の民家空爆 犠牲者多数
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 2
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 5
    「ワークライフバランス不要論」で炎上...若手起業家…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    習近平を側近がカメラから守った瞬間──英スターマー…
  • 8
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 9
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 10
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国」...写真を発見した孫が「衝撃を受けた」理由とは?
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    建物に突き刺さり大爆発...「ロシア軍の自爆型ドロー…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶり…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story